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コンコン、とサブウェイマスター専用の執務室のドアを叩く。中から返事は返ってこない。あれ?確かさっきノボリさんが入っていくところを見たんだけどなぁ。いないのかな?勝手に入るのも悪い気がしたけれど、書類の確認をお願いしたかったしそっとドアノブに手を掛けた。

部屋の中に足を踏み入れると、ソファから黒いスラックスが出ているのが見えた。むくむくっと好奇心が湧き上がるのを感じた。静かにソファまで近づくとそこにはやっぱりノボリが寝ていた。大きめのソファだけど、長身のノボリさんが寝るには少し小さいみたい。

あまり表情を変えることが少ないけれど、寝ている時のノボリさんはいつもより幼く見える。なんだか可愛いなぁ。でも真面目なノボリさんが職場で寝ているところなんて今まで見たことない。最近はお客さんも多いし、それ以外にも事務仕事だってあるし、私たちよりもずっと大変なのは目に見えて分かる。それでも弱音なんて決して吐かないし、私たちへの気遣いも忘れない。完璧に業務をこなしていくところは本当に凄い。

眠っているのを良いことに、銀色の長い睫毛に縁取られた瞼にキスをひとつ落とした。

「う、わっ、」
書類は机の上に置いて、執務室を出ようと立ち上がると同時に手を引かれてソファに寝ていたノボリさんの上に雪崩れ込む。私を抱き締めながらにやりと笑うノボリさんと目が合った。やられた。狸寝入りか。

(瞼へのキスは憧憬の意。)


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