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力尽きてしまったサザンドラをボールへ戻す。いつも頑張ってくれてありがとうね。でも今日も負けちゃった、ごめんね。


最近このスーパーシングルトレインに乗車するのが日課になりつつある。今日は最終のトレインだ。ここのマスターのノボリさんは本当に強い。私の目標でもある。

ゆらゆらとトレインに揺られながら、座席に腰掛けて話をするのもいつものことだ。

「私今日はホームに着いたらそのまま車両点検でトレインに乗ったままカナワタウンヘ向かいます。お送り出来ませんがお気を付けてお帰り下さいまし。」
「ありがとうございます。大変ですねぇ。」
「最近はスーパーシングルでも私の所まで安定して勝ち抜いて来られますね。」
「はい、でもまだノボリさんには勝てないのでもっともっと頑張ります!」
「ふふ、私は貴女だけには負けられないのですよ。」
「え?」
「だって私に勝ったらもう此処には来なくなるでしょう?」
「そんなこと...!」
「おや、そろそろホームへ着きますね。」

そんな意味深な言葉を残したままホームに着いてしまって、詳しく聞くタイミングを逃してしまった。
いつもとっても紳士的なノボリさんはトレインを降りる時は手を差し出してくれる。その大きな手を掴んで私も立ち上がった。
いつもはそのままホームへ降りるけれど、今日は違う。私がホームに降り立ち、ノボリさんはトレインの中だ。なんかあれみたいだ。別れを惜しむ恋人み的な。わ、自分で言ってて恥ずかしくなってきた。ノボリさんは私の手を両手でぎゅっと握り直した。

「...?あの...」
「お慕いしております。」
「...っ、」

そのまま私の手を引き寄せてノボリさんの顔が近づいてきた。慌てて目を閉じると唇に柔らかい感触が。これがもう何かなんてとっくに分かってる。
おそるおそる目開けると、少し目を細めてこちらを見ているノボリさん。

「お返事ですが、スーパーシングル勝ち抜き私に勝利した暁に教えて下さいまし。では、お気を付けて。」

唖然とする私をそのままにして軽く手を振って、見計らったようにトレインが動き始めた。
ちょっと待って、
そんなのずるい!
絶対ノボリさんに勝ってこの気持ち伝えさせてもらいます!
覚悟して待っててくださいね!


(唇へのキスは愛情の意。)


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