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嘘吐きお月様




「さあ、ヒメ様、お願い致します。」

「っ無理ですってば...!」


私の膝の上に向かい合わせ座り、じたばたとどうにか退こうとしているヒメ様。そろそろ無駄ということにお気付きなさい。
恥ずかしがり屋のヒメ様をこの体勢に持ち込むのにも一苦労でございました。

「そうですか、そこまで仰るのであれば禁煙は諦めるしかないですね...」
「ま、待って下さいっ!」

わざとらしく目を伏せてみると、どうやら効果は抜群だったようでございますね。
禁煙をするというのはあくまで口実。煙草は嗜む程度ですし、禁煙などいつでも出来ます。こうやって禁煙を口実にヒメ様にお願いするのは只の私の我儘でございます。

私とヒメ様は非常に順調にお付き合いを進めております。仕事が多忙な私に理解があり、そして時間が空けば連絡を取り合い、休みの日は一緒に出掛けたり家でゆっくり過ごしたり。そんな愛らしくて可愛らしいヒメ様に文句の付けようなどは全くありません...と言いたいところなのですが、ヒメ様は非常に恥ずかしがり屋なのです!そんはいつまで経っても初々しい反応を見せて下さるのは嬉しいのですが、キスをするのも抱き締めるのも全て私から。本当にそこだけに小さな不満がございました。

「ではヒメ様からキスして頂けるのですね?でないと私口寂しくてまた煙草を吸ってしまいます。」
「それはだめです!」

前から健康のためにも煙草は辞めた方が良いと仰っていたのです。それを良いことに禁煙をする変わりに口寂しくなった場合にはヒメ様がキスをして下さる約束をこじ付けました。

「絶対、絶対に見ちゃだめです...!」
「ふふ、承知致しました。」

私の目元を小さな手で覆って言いました。なんと可愛らしい抵抗なんでしょうか。ちゅっと、リップノイズを立てて唇同士が触れ合いました。

「ヒメ様、もっと。」
「今日、だけですからっ...」

必死で何度も唇を合わせて下さる様子は私をとても煽りました。その時ドアを叩く小さな音がしました。どうやら私の部下が書類を持ってきたようです。

「っ!...すみませんっ」

私とヒメ様が座っているソファはドアと向かい合わせ、つまりはヒメ様は部下に背を向けている状態でした。一杯一杯なヒメ様は部下が入ってきたのにも気が付いておりませんでした。
私はヒメをぐっと引き寄せて今までより深く唇を合わせて柔らかい口内を探ります。上司のとんだ場面に遭遇し固まってしまった彼に、「早く出て行け」と目線で送ると察したようでそそくさと退室しました。

「...んっ...?」
「いいえ、何でもございません。」

少し動きを止めた私を不思議に思ったのか、目を開けて私をじっと見つめていました。ああ、いけません。私癖になってしまいそうです。しばらくは禁煙を理由にお付き合い頂くと致しましょう。

ね、私のことをいつも考えて下さるヒメ様ならお手伝いして下さいますよね?




(嘘吐きお月様)
「クククククラウドさん!!僕大変なもの見ちゃいました!!!」
「はあ?」









***
金木犀様から頂いた、ノボリと恥ずかしがり屋主人公のほのぼのでしたー!
ほのぼの...になったかな?
大変遅くなってしまって申し訳ありません...!
強引で策士なノボリさん、書いててすごく美味しいです!!!!お気に召して頂ければ嬉しいです^^







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