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おやすみダーリン、




あと一枚...!
何やら大切なことが書いてありそうな白い紙に手を伸ばす。積もりに積もった書類を片付け始めて早数時間。全力で取り組んだ甲斐があってか無事に終わりを告げそうだ。

時間は17時55分。
今日こそ定時に帰れる。定時に帰ったのはいつだったか。もう記憶も覚束ない。この忙しいギアステーションでは定時なんてのは夢に近い。帰ったら何をしようか。ポケモン達とゆっくり過ごしてもいいなぁ、たまには自炊でもしちゃおう「ヒメ、5秒以内でワタクシのところへ来なサイ。書類の件デス。」

・・・さようなら定時。


「ヒメ書類の不備多いのさ!」
「ヒメ先輩しっかりして下さいよー。」

がっくりと項垂れる私に向かって同僚や後輩のからかいの声がのし掛かる。ゆっくりと起き上がってボスのところへ。早く行かないとまたインカムが飛んでくる。

私の名誉の為に言っておくけど、書類の不備なんてほとんどない!...たまーにはあるけど。私が大抵こうやって呼ばれるのは理由がある。








ガチャリと重そうなドアを開ける。
部屋に入るとボスが高そうなソファにどっしりと腰掛けていた。

「遅イ。」
「ごめんなさい。でもボス!」
「ボスではないでショウ?」
「...インゴさん、」
「宜シイ。」

私とインゴさんはまぁそういう関係だ。職場に恋愛事情を持ち込むのはあまり良くないと思うのできっちり分けているつもりである。
・・・私は。

ちょいちょいと手招きをされてボスの隣に腰を下ろす。するとインゴさんはぽすりと私の肩に顔をうずめた。
そう。分けられていないのインゴさんの方だ。確かに人がいる前だと余所余所しい感じだけど二人でいるとすぐにこんな風になる。だからインゴさんが書類の件で、と呼び出す時は大抵インゴさんが甘えたいときなのだ。

「お疲れですか?」
「眠いのデス。」
「最近忙しいですもんね。」
「ですので、仮眠に付き合いなサイ。」
「えー!私もう帰りますよー!」
「煩イデス。オマエはワタクシの言う事を聞けばいいのデス。」

一方的にそう言い放って、私を持ち上げてソファに横になった。私はインゴさんのお腹の上に下ろされた。そのままポカンとしていると、ぐっと背中を押されてインゴさんの胸に倒れ込む。

「ちょっ、重いですってば!」
「全く問題ありませんネ。」

私の話なんか聞いちゃいない。そして、ソファに掛けてあった肌触りの良いブランケットで私を包んだ。

「ありがとう、ございます。」
「一応レディなのですカラ体を冷やしてはいけません。」

なんだかんだでインゴさんは優しい。インゴさんの規則的に流れる心臓の音と、暖かい体温に段々と瞼が落ちてきた。

「おやすみナサイ。」

そうインゴさんが言って優しく頭を撫でてくれたのは夢だったのかな?起きてから聞いてみよう。あぁ、でもインゴさんはきっと教えてくれないかもしれないな。






(おやすみダーリン、)
「...おはようございます。」
「えぇ、おはようゴザイマス。」
「よく眠れましたか?」
「おかげさまデ。」
「ふふ、良かったぁ。」
(オマエがそうやって笑うのはズルいデス。)










***
真魚様から頂いたインゴ甘でしたー!
大変遅くなって申し訳ありませんでした...
お気に召して頂ければ幸いです^^
またサイトの方にも遊びに行かせて下さいね!
今回は企画にご参加頂きまして本当にありがとうございました!







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