02

私の恋人が人魚になりました。






私にはそれは可愛い恋人がおりした。ですが、ある日を境に人魚になってしまったのです。私も人魚の生体について詳しくは存じ上げませんが、水中での生活が必要ということは分かりますので、大きな水槽を買ってきて彼女はそこで生活をしています。
人魚になったヒメはとても美しかったのです。光を浴びて鮮やかな色を奏でる鱗も、少し尖った形になった耳も、水の中でゆらめく長い髪もどれを取っても素晴らしいものでした。


私は常々思っておりました。
ヒメを誰にも見せたくない、どこにも行かせたくない。ずっと私の家に置いて人の目に触れぬように出来ればと。
以前そう言った時に彼女は、
「さすがにそれは気が狂ってしまう。」
と少し笑って答えました。それをきっかけに始めた同棲でした。


今のヒメは私なしでは生きていけません。ヒメの生死は私の手の中にあり、この姿ではどこにも行けず、誰にも会うことが出来ないことは明白でした。まさに私が思い描いていた通りでございます。ああ、なんということでしょう。神が私に下さったプレゼントは何にも替え難いものでした。神は信じておりませんでしたが、この時だけは心底震え、感謝致しました。

さて、今日もしっかり定時に仕事を終わらせて、健気に私のことを待っている彼女の元へ帰りましょう。




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