スカーレットライン

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「マツバさーん!」

上から落ちそうな程身を乗り出してぶんぶんとヒメが手を振っている。相変わらずお転婆だなあ。
ふわりとフライゴンが僕らの目の前に降り立った。先にノボリさんが降りてきた。そしてヒメに手を差し出して、ヒメも慣れたようにその手を掴んで降りた。なるほど、これがクダリさんが言ってた「ノボリとってもかほご!」か。実はクダリさんとはたまにメールのやり取りをしている。クダリさん曰く”お兄ちゃん同盟“らしい。喜んで参加させてもらおうじゃないか。

「お久しぶりですー!」
「ご無沙汰しております、マツバ様。おや、こちらの方は?」
「久しぶり。僕の彼女のユキだよ。」
「私ノボリと申します。」
「ヒメです!(すっごい美人さん!)」
「初めまして。ユキです。(まあ!とっても可愛い方!)」

ユキが二人に会うのは初めてだけど、たぶんユキがヒメのことを気に入るだろうなってなんとなく思ってた。

「お二人が着ているのは和服でございますか?」
「とっても似合ってます!」
「宜しければお二人も着てみますか?」
「良いんですか!?着たいです!」
「はい、私の家で着物のレンタルもしているのでどうぞ。」

四人でユキの店へ行った。
所狭しと並んでいる着物に二人とも釘付けだった。確かにこれだけ色も種類も豊富だったら目移りしてしまうのも仕方がない。

「ヒメちゃん、こっちへ。」
「はーい!」
「ノボリさんは僕が着付けるよ。」
「お願い致します。」








「どの色にします?」
「うーん、どうしようかなー。どれも綺麗です〜」
「じゃあ私に選ばせてもらえますか?」
「はい!お願いしますっ」

ヒメちゃんに似合いそうな色を着物を選んでゆっくり着付けていく。マツバから聞いていたけどすごく可愛い子。勿論外見もだけど内面も。ノボリさんが溺愛しているというのも頷ける。

「ノボリさんってどんな方ですか?」
「そうですねー、心配性ですね。あと、過保護で廃人!...でも優しくてかっこいいです。」
「大好きなんですね。」
「わ、私のことはいいですから!ユキさんはマツバさんのどんなところが好きなんですか?」
「あの真っ直ぐな所ですね。勿論優しくてかっこいいところも。...あら、ヒメちゃんすごく細いですね。帯がこんなに余ってます。じゃあ可愛く帯はリボン結びみたいにしましょうね。」
「わ、可愛い!ノボリさんとマツバさんって似てません?マツバさんもちょっと心配性ですよね。」
「確かにそれは言えてますね。マツバも過保護なところがありますし。」
「ふふ!やっぱり!きっと似たもの同士なんですよね!」

ヒメちゃんと話すのはとても楽しくて話が弾む。初めて会ったばっかりなのに。所謂ガールズトークをしているうちにあっという間に着付けは終わっていた。さ、きっとマツバさん達も待っているだろう。








ノボリさんにはやっぱり彼の色の黒の着物を選んだ。帯の色と羽織りをアクセントにすれば黒の着物も問題ない。そういえばノボリさんとこうやって二人で話すのは初めてかもしれないな。

「ユキ様はとても美しい方ですね。あのような方を大和撫子と言うのでしょうか?」
「僕も大和撫子の定義は分からないけどそう思うよ。」
「それに背もお高いですし着物が映えますね。」
「そうかな?高い方かもしれないけど、それは小さいヒメをいつも見てるからじゃない?」
「ああ!そうかもしれないですね。」

ノボリさんが楽しそうに笑った。ノボリさんが笑ってるところは初めて見た。ポーカーフェイスのイメージだけどそんなことはないのかな。

「ノボリさん前より笑う様になったね。」
「...クダリにも言われました。多少自覚もしております。」
「ヒメのおかげだね。結婚式には呼んでよね。さ、着付けはこれで終わり!」
「ありがとうございます。勿論でございます。マツバ様もお呼び下さいね。ヒメ達はまだなのでしょうか?」
「女性の着付けは時間がかかるからね。」

二人を待っている間もノボリさんも話をしていた。会話の内容はほとんど彼女達のことばかりだけどね。
しばらくすると着付けを終えた二人が戻ってきた。ヒメは薄桃色で小さな花が散りばめられてる着物だった。髪の毛も上にまとめられていて着物と同じ色の簪で留められている。うーん、これは可愛いとしか言いようがない。ちらりとノボリさんを横目で盗み見ると彼の目にはヒメしか映ってなかった。

「ヒメ!大変可愛らしゅうございます!」
「ノボリさんもその着物すごい似合ってますよー!」
「ユキ様、この着物一式買い取らせて頂いて宜しいですか?」
「え?えぇ、勿論です。」
「ノボリさん、クダリさんとカミツレさんの分も!」
「おや、すっかり失念しておりました。」

結局今それぞれ着ている着物と、クダリさん、カミツレさんの分と計四着の着物一式を買って行った。またこれでヒメの撮影会が始まるのが目に浮かぶよ。頑張れ、ヒメ。

二人は連休を取ってきていると言っていたから今日は僕の家に四人で泊まることにした。ユキも嬉しそうだったからまだヒメと話し足りないんだろう。彼女と妹のように思っている子が仲が良いのは僕にとっても嬉しいことだ。


僕らの目の前に広がる綺麗に色付いた夕焼けを見つめながら、それぞれの幸せな未来図が見えたような気がした。








スカーレットライン
(ふふ、二人ともよく寝ておりますね。)
(昨日遅くまでお喋りしてたみたいだしね。)
(では、私達は彼女達のために朝食でも作りましょうか。)
(ん。)







***
ハル様リクのマツバさんと両想い甘夢でした!追加設定でそこにノスタルジックガールヒロインとノボリさんが来てそれぞれのお相手について語り合うお話でした^^
長編二人が出てくるとクダリさんも出したくなります(笑
2ページ目は会話文を多めに書いてみました。もし機会があれば続編も書きたいなーと思いました(*´∀`*)
企画にご参加ありがとうございました!





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