「ヒメ様、」
「なに。」
「どうしたのです?」
「べつに。」
本日は私の愛する恋人であるヒメ様がギアステーションの近くに来たので立ち寄られたのです。私もとても嬉しく思っておりましたが、生憎バトルトレインから呼び出しがありましたので挑戦者様を瞬殺して帰って来たらこの状況でございます。部屋から出て行く時は機嫌が良かったのですが、これは困りましたね。
「私はサイキッカーではないので言って頂かないと分かりませんよ?」
「だって...」
「だってではないでしょう?」
私の隣で小さな体を更に小さくして、自身の膝に置かれた手をじっと見つめていました。これでは埒が明きません。
「こちらにおいでなさい。」
ヒメ様の脇に手を入れ私の膝の上に向かい合わせで乗せます。頬を両手で包みうろうろと彷徨う視線を無理矢理私の方へ向けました。
「さぁ、言いなさい。私が戻るのが遅くなったから拗ねているのですか?」
「ちがう。帰って来るのすっごく早かった。」
「えぇ、急いで片付けてきましたから。」
「あの、えと、」
言葉を濁しながら私のシャツをぎゅうっと握りました。彼女の一挙一動は私の心を狙ったかのように擽るのです。
「さっきノボリがトレインから帰ってくるの部屋の前で待ってたの。そしたら、ノボリがトレインから降りた瞬間プレゼントとか手紙とか持った女の子がたくさんいて...ノボリがそれを受け取ってるの見て凄い嫌な気持ちになって...」
一度こちらに向けた視線をまた外し俯きました。これはこれは、大変可愛らしい。所謂嫉妬と云うものでございますね。
「ヒメ様は今までそんなことを言わなかったので嫉妬などはあまりしないものだと思っておりました。」
「だって!かっこ悪いって思ってたから。でもさっきのは嫌だったの!ノボリは私のなのっ...!」
私は我慢が出来なくなり彼女の形の良い後頭部を押さえつけ、角度を変えて何度も唇を塞ぎしました。どうして一々私を煽るのですか。
「...っ!やだ、くるしいっ...」
「私を煽ったのはあなたですよ?」
「煽ってなんか...ないのにっ、」
無自覚とはタチが悪い。
あなたに溺れているのは私の方だと思っていたのですが、どうやら私の勘違いだったようでございますね。
「そんなに可愛らしく嫉妬して下さるとは、このノボリ冥利に尽きます。あなたがそう仰るのであれば私これから一切そういったのは受取りません。」
「ほんとに?」
「えぇ、私があなたに嘘を吐いたことがございますか?」
「ございません...」
「宜しい。」
嬉しそうに笑うヒメ様を見ていると私まで嬉しくなります。ただ他の方からのプレゼントを受け取らないと言っただけで喜んで下さるとは。自惚れても宜しいのですね?
「でもノボリ怒られないかな?」
「どうでも良いことですよ。他の方にどう思われようと全く構いませんので。あなたを差し置いて他に大切にするものなどないでしょう?」
「もー!ノボリ大好き!」
「私もですよ。」
さっきまでの不機嫌など嘘の様に私の首にするりと腕を回して抱き付いてきました。
ねぇ、ヒメ様、早く私のところまで堕ちてきて下さいまし。そして私なしでは息が出来なくなる位に。
深海の檻(もう私は後戻りは出来ない位、あなたに溺れているのですから。)
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ひいろ様リクの、モテるノボリに嫉妬する主人公でノボリ視点を書かせて頂きました!嫉妬系は書いててすごーく楽しいです!ノボリさんは溺愛、依存系が大好きです!(笑
今回は企画に参加して下さって本当にありがとうございました(;_;)これからも宜しくお願いします^^
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