彼女の抱き心地
ぼくクダリ。
今休憩中なんだけどとってもご機嫌!
なぜかというと、ぼくの妹(正式にはまだ違うけど)のヒメが作ってきてくれたパウンドケーキを食べてるから。それだけじゃなくて、ソファに座ってヒメを抱っこしてるの!ほんとは休憩室まで行こうと思ったんだけど早く食べたかったしくっつきたかったから執務室で休憩することにした。
でもぼくが休憩を満喫してるのをぶち壊したのは双子の兄だった。
「ヒメ、倉庫の備品のことで確認したいことがあるので倉庫まで来て頂けますか?」
「あ、はい!わかりました!」
会議が終わって帰ってきたノボリは第一声にそう言った。うそばっかり。どうせヒメ不足になってきたからいちゃいちゃしたいだけなんでしょ?ぼく分かるもん。ずるい!今ぼくがいちゃいちゃしてたのに!
「ヒメ行っちゃうの?」
「ごめんなさいクダリさん。ちょっと行ってきますね。」
「すぐ帰ってきてね?ぼく待ってるから!」
「はい、さくっと終わらせちゃいますね。」
ノボリのばか!
ヒメかわいい!
早く帰ってきて欲しいなぁ。
***
「白ボス、聞いても良いですか?」
「んー?」
「ヒメちゃんの抱き心地ってどんな感じですか?や、あの、変な意味じゃなくて!ちょっと気になったんです...」
最後の方は小さい声になりながら鉄道員の一人がぼくに聞いてきた。どうみてもヒメに気があるんだろうなぁ。ゴシューショーサマ。ちらりと執務室を見回していつもお小言を言うクラウドがいないのを確認した。まぁちょっとくらいならいっか。
「えっとねー、」
ぼくが話し始めると、執務室にいた鉄道員達が集まってきた。あれ?皆ヒメはノボリのだって知ってるよね?うんうん、まさか知らないわけないよね。
「まずね、ぼくの腕に収まるくらいちっちゃい!それからー、柔らかくて良い匂いがする!」
「どんな匂いなんですか!?」
「んー、甘い匂いかなぁ。なんかふわふわしててぎゅーってしたくなる。」
おおー!ってどよめきが起こった。そりゃあヒメが可愛くて良い子だってのは知ってるけどこんなに人気だったんだなぁ。でもヒメの抱き心地とか可愛いとこ言ってたらキリがない。
「あとねー、敏感?後ろから首筋のとこにすりすりするとくすぐったいって言ってすぐにびくびくする!それからノボリが言ってたのはえっちのときに「クーダーリー」
びっくりして振り向くとノボリが鬼みたいな顔で立ってた。
「え?ノボリ?倉庫に行ったんじゃなかったの?」
「不穏な気配を感じて戻って参りました。それよりクダリ!ヒメの可愛いところはペラペラと口に出してはいけないと言っているでしょう!しかも夜のことまで!」
「いたい!ほっぺた取れちゃう!」
ぼくのほっぺたをぎゅうぎゅうに抓りながら目を釣り上げて怒ってる。ぼくはそのあとノボリが放った言葉に衝撃を受けた。
「クダリ!貴方はこれから二週間ヒメに触れるのを禁じます!」
「むりむり!ぼく死んじゃうよ!」
「知りません。約束を破った貴方が悪いのです。」
わあああああん!
ノボリのけちんぼ!おに!きちく!
言いたいことはたくさんあったけど、こうなったノボリは頑固だし、またほっぺた抓られるのはいやだかは心の中でいっぱい文句を言った。そんなノボリがにっこり笑って鉄道員達に向き直った。
「さて、今愚弟がお話ししたことを今すぐに忘れて下さいましたら夜勤一週間で見逃してさしあげましょう。」
「「「すみませんでした!!!!」」」
「そしてヒメに好意をお持ちの方につきましては命がある内に諦めて下さいまし。」
(((魔王様...!)))
「お返事は?」
「「「はい!!!!」」」
「宜しい。では私はヒメを待たせておりますのでこれで。」
ヒメが絡むとノボリは最強の魔王様になることが分かったある日の午後でした。おわり、まる。
彼女の抱き心地(ノボリさん戻ってくるの遅いなぁ...)