ノスタルジックガール | ナノ

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「申し訳ありません。彼女についてお答え出来ることはありませんのでお引き取り願えますか?」
「ヒメさんは今どこにいるんですか!?」
「ヒメさんはカントー出身との噂ですが本当ですか!?」
「ノボリ、みんな全然聞いてない。」
「そのようですね。」


カミツレ様から広告の掲載されてから事務所に問い合わせが殺到しているため、ギアステーションにも恐らく沢山人が押し寄せるであろうと連絡が入りました。案の定、すぐにその通りになりました。私とクダリが責任者として対応に出ましたが一向に耳を傾けて頂ける様子がございません。仕方ありせん。少々力尽くな方法を取らせて頂きます。

「皆様、こう致しましょう。スーパーマルチトレインにご乗車頂き、私とクダリのタッグを倒せましたら彼女のことについてお答えしましょう。如何ですか?」

あちこちからざわざわとしたどよめきが起こります。まあそうでしょう。私とクダリは此処でサブウェイマスターという立場にいるということはバトルの腕がどんなものか知れているはずですから。

「どうしてサブウェイマスターのお二人がそこまでするんですか!?」
「何かヒメさんとの間あるんですか!?」
「それは責任者としての対応ですか!?」
「ねえ、僕らの話聞いてるの?」

はあ、とクダリが大きく溜息を吐くと辺りが少し静かになりました。いつも笑顔のクダリがこうかなるとは大分苛ついている様でございます。

「ノボリ、もう言っちゃえば?その方がきっとヒメも安全。」
「確かにそうですね。その方が良いかもしれません。」

クダリと言う通りです。
彼女が誰のものなのかを公言しておけばおかしな虫も付かないでしょう。皆様の視線が一気に私に集まり、記者の方々もメモやボイスレコーダーを構えました。

「ヒメは私の部下であり婚約者でございます。婚約者として、上司として私が全力でお守りするのは当然のことでしょう?」

ざわめきが先程よりも更に大きくなり、また記者の方々は口を開こうとしましたが、クダリがぴしゃりと言い切りました。

「もう話すことない。聞きたいならスーパーマルチに来てね。」
「これ以上は営業妨害として然るべき対処を取らせて頂きます。」

不服そうではありますが、どうにかお引き取り頂けたようでございますね。これでいつものバトルサブウェイに戻れます。

「ふふー、明日のスポーツ紙の一面は決まっちゃったねー!婚約者とまで言うとは思ってなかったけどね。」
「いずれそうなるのですから何ら問題ありません。」
「まあねー。それよりも早くヒメのことに行ってあげなよ!」

いつもの笑顔が戻ってきたクダリが愉快そうに口を開きました。スポーツ紙などにどう書かれ様と全く気になりません。彼女を守ることが出来れば何だって構わないのです。ぎゅっと右ポケットに入れた小さな箱を握りしめました。




クダリに背中を押され、モニター室に入るとヒメが一人でいました。他の鉄道員達は気を利かせて何処かに行ったのでしょうね。良い部下を持ったものでございます。

「ヒメ、」
「はっ、はい!」
「見ておりましたか?」
「はい...」

林檎の様に赤くなった顔を隠す様に俯いていたヒメがゆっくりと顔を上げました。「何を」とは言わなくても分かっていますね。右ポケットから小さな箱を出し、それを開いて彼女の前に差し出しました。彼女の大きな目が更に見開かれました。

「本当は先にあの様なところで言うつもりはなかったのです。申し訳ありません。」
「...」
「結婚、致しましょう。貴女と共に歩む未来を私に下さい。」
「...っ、はいっ!」

ぼろぼろとその瞳から大粒の涙を零しながらもはっきりと私のプロポーズに応えて下さいました。白く細いしなやかな手を取り、左手の薬指にシルバーのリングをはめました。まだ涙が止まらないヒメを抱き寄せ、リングがはまっている指を撫でつけました。ああ、何と幸せなのでしょうか。


「ノボリおめでとー!」
「こら、白ボス!出たらあかんて!」
「ヒメ!おめでとう!僕ちょっと感動して涙出そうになったよ!」
「カズマサ泣いてたのさ!」
「うるさいです!」
「黒ボスやりましたね!」
「遂にアイドルのヒメちゃんも人妻か...」
「幸せになって下さいね!」

ヒメを抱き締めながら、次々と掛けられる祝福の言葉に胸が熱くなるのを感じました。これで私とヒメを邪魔するものは何もないのです。貴女を傷付けるものは私が全て排除してみせましょう。
一生大切にし、愛し続けることを誓います。

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