ノスタルジックガール | ナノ

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「...おはよう、ございます。」
「起こしてしまいましたか?申し訳ありません。」

ふと、目を開けると私の手をふにふにしているノボリさんと目が合った。何してるんだろ?それよりも少し空いた隙間に肌寒さを感じノボリさんに擦り寄った。大きな手で髪の毛を梳かれる感覚にまた睡魔が襲ってくる。だめだめ、ここで寝たら遅刻しちゃう。




それから目覚ましが鳴って一緒に起きて出勤する準備をする。朝ごはんを作って、寝起きが悪いクダリさんを起こして、ポケモン達と一緒にご飯を食べる。これが毎朝恒例になっている。

(ヒメ!)

食後のお茶を入れていると何処かから名前を呼ばれた。きょろきょろと辺りを見回すとベランダの手すりの所にカミツレさんのエモンガが座っていた。ベランダに出て抱き上げると肩から小さいポーチを斜めに掛けていた。

「おはよう!今日はどうしたの?」
(朝からごめんね。マスターからのお使いで来たの。はい、これ!)

そのポーチを開けて中からその小さい手でメモリーカードを出して渡してきた。可愛いなぁ、癒されるなぁ。

「これはなぁに?」
(こないだヒメがモデルした時のデータだよ。マスターが双子に見せたら喜ぶからって。)
「わざわざありがとうね。寒いから中においで。」

そう言うとエモンガは私の肩に乗った。昨日ポケモン用に作ったクッキーがあったからあれをあげようかな、と考えているとつんつんと頬を突かれた。

(ねぇねぇ!今日はヒメについてってもいい?)
「私は大歓迎だけどジムはいいの?」
(今日はマスターがモデルの仕事だからおやすみなの!)

それなら問題ないと思い、コーヒー、紅茶、ココアをトレンチに乗せてリビングまで運ぶ。もう準備が出来てソファで新聞を読んでるノボリさんと、まだ寝癖がついたままのクダリさんがいた。二人の前にそっと飲み物を置く。

「あれ?その子カミツレのエモンガ?」
「はい、うちにお使いで来てくれたんです。これどうぞ!」
「おや、これは?」
「この間モデルのお手伝いをしたときのデータみたいです。お二人にって。」
「...! 早く見たいですね。」
「見たい見たい!」





***
出勤してからいつも通りに朝礼を済ませて今日の二人のスケジュールを再度確認する。今日は午後から会議だから早めに行って必要は書類を並べておかなくては。頭の中で練っていると、インカムで呼び出しがあった。迷子のポケモンがいたみたい。

「エモンガ、行くよー」

また私の肩にすとんと降りる。ここが気に入ったみたいだ。二人に軽く声を掛けて執務室を後にした。







「ヒメ行った?」
「えぇ、ばっちりでございます。」

早速クダリと職場のパソコンに頂いたメモリーカードを入れて再生します。ヒメがいたら怒られかねませんから。
ぱっと画面に映ったのは愛らしいワンピースに身を包んだヒメでした。少しヒールのあるパンプスに華奢なアクセサリーがよく似合っています。いつもよりもはっきりしたメイクに綺麗に巻かれた髪の毛が眩しいです


「これはなんという破壊力でしょう!」
「すっごくかわいいー!あ、ノボリ!このヒメもやっばい!」

クダリが指差したデータを開くと、薄いピンク色のルームウェアのヒメでした。カミツレ様とは色違いのようで、ベットに寝転んで映っておりました。私のワイシャツ姿も素晴らしいですが、このルームウェアもよくお似合いでございます。カミツレ様に頼んだら一着頂けないでしょうか?

「ノボリノボリ、ぼくのパソコンにこのヒメ送ってて!髪の毛くるくるで可愛いやつ!壁紙とライブキャスターの待ち受けにするんだ〜」
「それは素晴らしいアイディアでございますね!私も選びます!」
「あの、これ急ぎの書類なんやけど...」
「うるさいですよ、減給にされたいのですか?」
「理不尽!!カズマサ!はよヒメ呼んでこい!」
「は、はい!」






(どしたの?)
「今呼ばれた様な気がしたんだけど気のせいかなぁ?」


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