ノスタルジックガール | ナノ

45

「ただいま帰りました。」

本日の業務も終わりようやく我が家に辿り着きました。ここしばらくあまり触れ合えていなかったので早く彼女に癒されとうございます。

「おかえり〜」

はやる気持ちを抑え靴を脱いでいると、ひょこひょこと歩いて来たのはクダリでした。いつもでしたらヒメは玄関まで迎えに来て下さるのに。どうしたのでしょう?まさか捻ったと言っていた足が酷く痛むのでしょうか?私は平静を保つことが出来ませんでした。以前でしたらポーカーフェイスを保つことが出来たでしょうが、彼女のこととなると話は一転します。

「ヒメは?」
「あのねぇ、明日休みだしお酒買ってきて飲もうと思ってテーブルの上に出してたの。そんで、ぼくがトイレに行ったときにヒメが間違って飲んじゃって今可愛いことになってる。だからそんな心配そうな顔しないでね。」

私が言いたかったことは全てクダリにはお見通しだったようでございます。彼女に何もなくて安心致しました。

「あぁ、そうでしたか。」
「ん、あとはノボリに任せるね。ぼくはもう十分いちゃいちゃしたし!」
「了解致しました。クダリ、」
「なぁに?」
「レイカ様の件はありがとうございます。」
「ふふー、なんのことかな?」
「いえ、言いたかっただけですのでお気になさらず。」
「そ?じゃあぼく寝るね。おやすみ〜」
「お休みなさいまし。」










そっとリビングのドアを開けると、ソファにちょこんと座ってちびちびとお酒を飲むヒメがいました。

「ヒメ」

ゆっくり呼び掛けると嬉しそうにこちらを向いて飛びついてきたのです。勿論しっかりと受け止めて頭を軽く撫でて差し上げます。

「くだりさんおそいー!」
「おや、」

どうやら酔っていて私とクダリを間違えているようでした。普段でしたら決して間違えませんのにお酒の力は凄いなと一人で感心してしまいました。

「さっきのはなしのつづききいてください!」
「うん、教えてくれる?」

さっきの話というのも気になったのでここは一旦クダリのフリをしてみましょうか。二人でソファに腰掛けると、私の肩にもたれ掛かって参りました。やはりお酒が入るといつもより積極的でございますね。

「あのね、わたしやっぱりレイカさんにやきもち妬いてたとおもうんです。ノボリさんのとなりはわたしの場所なのにっておもって、すっごくいやなきもちになったし、ノボリさんが一生懸命かんがえてくれたことだとはわかってるんですけど、かのじょはいませんって言ってるのきいてかなしかったんです。わたしのわがままだなってりかいはしてるんですけど...さみしくて、」

どうしましょうか。思わず手のひらで顔を覆って隠してしまいました。私今とてもだらしがない顔をしている自信がございます。なんともお可愛らしい!ブラボーでございます!彼女は恥ずかしがってあまりそういったことは仰ってくれせんので今の言葉は大変嬉しく思います。隣に座るヒメを抱き寄せて、首筋に顔を埋めました。

「ふふっ、くすぐったいですー」

くすくすと楽しそうに笑う彼女の頬を両手で捕まえて繰り返し唇を合わせました。私すっかりヒメに依存している様でございます。彼女がこんなにも愛しくて欲しくて仕方がないのです。

「っぁ、んぅ、のぼりさん...?」

息が苦しくなって意識がはっきりしてきたのかどうやらやっと気付いて頂けた様です。

「ただいま帰りました。」
「おかえりなさい、です。あれ?...クダリさんは?さっきまでいたのに...」
「クダリは部屋に戻りましたよ。私達も部屋へ行きましょうか?」
「え?でもまだご飯食べてないですよね?」
「まず先に貴女を頂きたいのです。」
「!?ぅ、や、待って、」
「待てません。」

暴れる彼女を抱きかかえて足早に部屋へ向かいます。お酒のせいで力が入らないのすぐに腕の中で大人しくなったヒメが可愛いくて口角が上がるのが分かりました。
明日はクダリが出掛けたいと申しておりましたので支障が出ない程度にしなくてはいけませんね。出来るかは疑わしいですが最大限に努力はしてみましょう。
淋しくさせてしまった責任はきっちり取らせて頂きます。ね、ヒメ?




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