ノスタルジックガール | ナノ

38


「ただいま〜」

クダリのへろりとした声が玄関から聞こえて参りました。本日の業務を全て任せたので感謝せねばいけません。

「おかえりなさいまし。」
「あ!ヒメだっこしてる!ぼくもだっこしたい!あれ?なんかヒメ疲れてない?」

リビングに入ってきたクダリがヒメを見て言います。私も改めて目をやると、くったりと私の胸にもたれ掛かっており、目は涙で潤み、頬を桃色に染めて軽く息を乱しております。なんとも扇情的でございます。

「どーせノボリがいじめたんでしょ?」
「少しお仕置きをしただけです。」

クダリとやり取りをしていると、ゆっくりとヒメが顔を上げ、仕返しとばかりにかぷりと私の首筋に噛み付きました。

「あーあ、逆効果だね。」
「全く、貴女はどこまで私を煽るつもりなのです?」

噛み付くといっても力が入らないようでしたので、子猫が甘噛みするといった感じでしょうか?潤んだ目で睨まれても全く怖くありません。寧ろクダリの言う通り逆効果にございます。ヒメの全てが可愛くて可愛くて仕方がないのです。どうすれば私のこの気持ちが伝わるのでしょうか?抱きしめた腕から伝われば良いのに。

「そろそろ下ろして下さい!」
「良いではないですか。あの時はヒメの方から私に跨って下さったのに。」
「は?何のことですか?」

やはり覚えていないのですね。クダリも同じことを思っていたようで、いつもより笑みを深くしてこちらを見ておりました。私とヒメが腰掛けている隣に座り、ヒメのさらさらの髪の毛を撫でつけながらクダリが口を開きました。

「覚えてないの?カミツレが来て飲んだ時があったよね?あの時ヒメ酔っ払っちゃってすっごい甘えん坊になったの。」
「覚えてないです・・」
「それでね、ノボリの膝の上に自分から座ってすりすりしたりしてたんだよ?」
「ノボリさんごめんなさい!」

まさか謝られるとは思っておりませんでした。謝罪されるどころか私としては感謝したいくらいでございます。

「何故謝るのです?ヒメは普段恥ずかしがってして下さらないのでとても嬉しかったのですよ。
ただし、今後飲みの席では飲みすぎない様に。他の方にあんなヒメを見られる訳にはいきませんから。」
「はい・・・」
「良い子です。」

前髪を軽く分けて、現れた額に軽くキスを落とします。他の方にあのような姿のヒメを見られでもしたら嫉妬で狂ってしまうかもしれません。大袈裟に聞こえるかもしれませんが誇大表現でもなんでもないのです。

「カミツレで思い出した!今日連絡があってね、明日ヒメとぼくらに話したいことかあるからギアステーションまで来るって言ってた!」
「私もですか。何でしょうね?」
「わかんない。明日言ってた話すからって教えてくれなかった。」
「まぁ明日になれば分かることでしょう。」
「そうですね。」

カミツレ様がわざわざ来られるということは大変珍しいです。しかもヒメも関係があることとは。少し嫌な予感がします。私のこういった時の予感は当たることが多いのです。



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