ノスタルジックガール | ナノ

37



「バトルサブウェイはどう?」
「すっごく楽しいですよ!」
「昔からヒメのバトルセンスは飛び抜けていたし、ぴったりの職場だろうね。」

優しくて、可愛くて、ポケモンが大好きで、バトルセンスがあって。初めて会った時から変わらない彼女の印象。向かい側に座って楽しそうに話すヒメ見ながらそう思っていた。いつまで経っても僕の大切な人だ。恋愛感情があるのかと問われればおそらくそれはないだろう。だが、とても愛しい妹の様な感じだろうか?

あの後、ヒメを連れて来たのは落ち着いた和食の店。ヒメも僕も和食が好きだし、この店は個室もある。地方は違えども一応僕はジムリーダーだし、彼女も制服のまま連れてきてしまったから出来るだけ人目に付かない方が良い。
久しぶりに顔を合わせたのもあり、積もる話でつい長々と話し込んでしまった。残念だけとそろそろヒメを返さないといけないな。

「ところでさ、」
「何ですか?」
「好きな人か彼氏出来たでしょ?」
「・・・」
「図星だね。君は昔から僕に隠し事は出来ないからね」
「何で分かったんですか?」
「しばらく会わない内にすごく可愛くなった。女の子らしさが増したというかね。」
「そんなこと・・・」

「こんなところにいましたか。」
ドアを開ける音と、少しだけ怒気を含んだような低い声が響いた。

「ノボリさん!」
「もう見つかっちゃったか。残念。」
「マツバ様、あの手紙は一体何なのですか。」
「しっかり書いてたでしょ?」
「ヒメを借りて行きます、としか書かれていたかったではありませんか。」
「そうだったかな?」
「え?二人とも知り合いなんですか?」

今までぽかんと僕らのやり取りを聞いていたヒメがやっと口を開く。

「えぇ、ジムリーダー、四天王、チャンピオン、サブウェイマスターの定例会がありますので何度かお会いしたことがございます。」

ヒメに近づきゆるりと頬を撫でる。あぁ、ノボリさんがヒメの恋人なのか。ノボリさんは堅実な人だしきっとヒメのこのをとても大切にしているのが伝わってくる。彼になら安心して任せられるな。

「じゃあ僕はそろそろ行くね。」
「また会いましょうね。」
「勿論。」

すれ違いざまにヒメの頬に軽く音を立ててキスを落とす。これ位は見逃してよね。ヒメのこと泣かせたりしたら僕が奪いに行くからね。









「ノボリさん、ギアステーションに戻らなくて良いんですか?」
「構いません。今日は貴女も私と業務終了です。」

私の手を引いてギアステーションじゃなくて家の方向に歩いて行くノボリさんに問いかける。少し歩くともう見慣れたマンションが目に入る。ってことはクダリさんが残りの仕事を全部押し付けられたんじゃ?・・・帰ってきたら謝らなくちゃ。今日はデザートにクダリさんの好きなプリンを作って出そう。部屋に入りリビングのふかふかの絨毯の上に座って、どうやってクダリさんのご機嫌を取ろうかと考えていたらノボリさんに抱き上げられ膝の上に向かい合って座らされた。え、ちょ、やだ!こんな恥ずかしい体勢!耐え切れなくなってばたばたと膝の上から逃げようとすると、細いけどしっかりした腕が腰にするりと回されて動けなくなる。

「どうしてライブキャスターに出なかったのです?」
「え?一回もライブキャスター鳴ってないですよ。」
「嘘おっしゃい。」

ポケットから取り出して見てみると画面は真っ暗。どこを押しても反応しない。あちゃー、これは完全に昨日充電するの忘れてたなぁ。

「あの、ごめんなさい。」
「マツバ様からの誘拐文の様な手紙は残されておりますし、ヒメのライブキャスターは繋がらないし心配しました。」
「う・・・。」
「挙句の果てには頬にキスされるという有様です。」
「返す言葉もありません。」

ふわりと顔を両手で包まれて目を合わせられる。そのまま左手が後頭部に、右手が腰にぐっと回り引き寄せられ、ノボリさんの顔が近くなって唇が合わさる。角度を変えて何度も口付けられる。中々離してくれないから段々息が苦しくなってくる。

「んっ・・・、くるし、です。」

息を吸おうと思って少しだけ上を向くと、待っていたかのように晒された首筋に軽く歯を立てられる。

「やだっ、噛まないで下さい、」
「お断り致します。どうやら私は自分が思っていたよりも随分と嫉妬深いようです。」

がぶりと立てれられ歯にびくんと身体が跳ねる。こんなことをされて恥ずかしいのと、首筋にかかるノボリさんの息が気持ち良いのが入り混じって段々と視界が私の涙でぼやけてきた。首筋からやっと顔を上げると口の端をにやりと上げて彼は言う。

「あぁ、そんなに可愛らしい顔をされると私どうしていいか分からなくなります。」

それからまたノボリさんのされるがままで、疲れた声でクダリさんのただいまが聞こえる頃には、私はぐったりとノボリさんの胸にしな垂れかかっていた。

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