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ゆるゆると優しく撫でる手が気持ち良くて少しずつ瞼が降りてくる。ぼくは今ソファに座るヒメに膝枕してもらってる。ちょうど休憩に入ろうとしたらヒメもだっていうからお願いしたらすぐいいよって笑ってくれた。ソファに座ってぽんぽんと膝を軽く叩くからすぐそこに行った。
「眠くなってきたら寝てもいいですよ?」
「んー、」
ふわふわした思考の中で最近ヒメよくメールしてるなぁって思った。今もライブキャスター片手にメールを読んでるみたいだった。誰とメールしてるんだろ?トウコかな?カミツレかな?
「ねぇねぇ、誰からのメール?」
「旅をしてた時にお世話になった人です。久しぶりに連絡がきたのでお互いの近況報告ですね。」
「ふーん。そっかぁ。」
「拗ねちゃいました?」
「んーん。でもノボリなら拗ねてたかも。」
「ふふ、そうですね。」
あー、もうだめ。
なんかヒメの匂いって落ち着くなぁ。香水とか何にも付けてないって言ってたけど。その匂いと撫でる手つきが合間って限界だ。
「ごめん、適当に起こして。」
「はい、おやすみなさい、クダリお兄ちゃん。」
!?
お兄ちゃん!?
お兄ちゃんって今言ったよね!?
眠気なんか一気に吹き飛んでがばっと起き上がると目を丸くするヒメと目が合った。
「どうしたんですか?」
「もっかい言って!」
「え?」
意味がわからないというような顔をするヒメ。初めてぼくのことお兄ちゃんって言った!すっごく嬉しい!
「おやすみなさい?」
「そのまえ!」
「ク、クダリお兄ちゃん・・・?」
「それ!」
すっかり目も覚めちゃってヒメを腕に閉じ込める。苦しいです、って身じろぎするから少しだけ力を緩めた。
「これからもお兄ちゃんって呼んでよ!」
「さすがに職場だはだめですよ。」
「えー、なんで?」
「公私混同しちゃだめだからです。」
「じゃあ家でだったらいい?」
「うーん、たまにだったら?」
「やくそく!」
嬉しくなってヒメの細い小指とぼくの小指を絡めて指切りする。
「ぼくノボリに報告してくる!」
ばたばたと出て行くクダリさんをを見送って、一気に静かになった部屋にぽつんと取り残された。そこにクラウドさんが入ってきた。
「白ボス急いでどこ行ったん?」
「ノボリさんのところみたいですよ。」
「さよか。なんや嬉しそうやなぁ。」
「はい、私あの二人と一緒にいれて幸せだなって思いまして。」
「それはボス達も思ってることや。ボス達だけやない、わいらもヒメが来てくれてほんまに良かったと思っとる。」
「ありがとうございます。私は本当にもったいないくらい幸せ者ですね。」
心がぽかぽかとあったかくなるのを噛み締めながら、ソファから立ち上がり軽く伸びをした。さ、そろそろ仕事に戻ろうかな。相変わらずすごく忙しい職場だけど、今日もまた頑張れそうだ。