ノスタルジックガール | ナノ

34

目が覚めると見覚えのない天井が目に入った。そういえば昨日は双子宅で飲んでそのまま泊まったことをぼんやりと思い出した。久しぶりにアラームをかけずに寝た気がするわ。そのまま起き上がりリビングへ続くドアに向かう。
リビングへ入るとソファに腰掛け新聞を読むノボリがいた。

「おはようございます。」
「おはよ。」
「二日酔いはありませんか?」
「えぇ、全く。」
「それはようございました。」

キッチンからぱたぱたとスリッパの音が聞こえてヒメがひょっこりと現れた。

「カミツレさん、おはようございます!」
「おはよ・・・う。」
「ん?どうかしました?」
「いえ、何でもないわ。」
「そうですか?あ、朝ご飯作ってるんですけど食べれそうですか?」
「ありがとう。是非お願いするわ。」
「はーい。もう少し待ってて下さいね。」

またぱたぱたと音を立ててキッチンへ戻って行った。さて、私はノボリに聞かないといけないことが出来たわ。

「ノボリ。」
「何でしょうか?」
「ヒメのあの格好は貴方の趣味なのかしら?」
「可愛らしいでしょう?世間では彼シャツと言うらしいですね。」

そう。ヒメが着ていたのはノボリの白いワイシャツ一枚なのだ。丈が太腿の真ん中くらいまであるので小柄な彼女はすっぽりとワンピースのように着ている。それはまだしもあの胸回りと、太腿のおびただしいキスマークと噛み痕の数。幸い服を着て見えるところには付けていないようだけれど。

「あの痕も貴方でしょう?」
「勿論です。本当は悪い虫がつかないように見えるところにも残したいのですが。ヒメがそれは嫌がるので。困ったものです。」

困ったのはあんたの頭よ。
幼なじみの溺愛っぷりに少し頭が痛くなってきた。もしヒメがこの家を出て行くなんて言ったらどうなることやら。まぁ今のところそんな心配は要らなそうだけどね。
それから寝ぼけ眼のクダリ起きて来るのと、朝食が出来るのがちょうど同じタイミングだった。ホットサンドに焼いたベーコンとウインナー、コンソメスープにサラダ。それを美味しく頂いて私はそろそろ帰ることにした。

「もう帰っちゃうんですか?」
「えぇ、やらないといけないことがあるのよ。」
「またいつでも来て下さいね!」
「話したいこともあるから近々お邪魔するわ。」

家に着くまでの間に私の意思はほとんど固まっていた。やっぱりヒメ以外考えられないわ。あの双子(特に黒い方)を納得させるのは大変そうだけど、私も生半可な気持ちで決めたわけじゃないから引き下がるわけにはいかない。考えている間に家に着いた。一泊しか空けていなかったはずなのにひどく懐かしい気がした。それだけさっきまでいた空間は居心地が良かったのだろう。私はすぐにデスクに向かい紙とペンを持った。食事を取るのも忘れて夜までその作業に没頭していた。
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