ノスタルジックガール | ナノ

32


「黒ボスと付き合うてることなんで隠しとったん?」

「だって、同じ職場なのに恥ずかしいじゃないですか。」

「そか?黒ボスは何て言っとった?」

「隠さなくても良いって。」

「やろうなー。」

ノボリさん、クダリさんマルチトレインに、カズマサは見回りに行ったので、私はクラウドさんさんと執務室で話をしていた。あ、カズマサには迷子にならないように私のランクルスを連れて行かせた。カズマサの手持ちのポケモン達も方向音痴らしい。
そんなカズマサからインカムが入った。

「ヒメ!ちょっと三番ホームまで来てくれる!?」

「了解、すぐ行くね。」

焦っている感じだったので急いで執務室を出た。私を呼ぶってことは大方迷子のポケモンでもいたんだろう。
三番ホームに着くと、おろおろしているカズマサとランクルスを見つけた。カズマサの前には小さな女の子が泣いていた。

「カズマサ、その子どうしたの?」

「ヒメ!待ってたよ!この子お母さんとはぐれちゃったみたいなんだ。でもさっきからずっと泣きっぱなしで・・・」

なるほど。今日の迷子はポケモンじゃなくて女の子なのね。これは予想してなかったな。私はしゃがんで女の子と目線を合わせる。

「お母さんとはぐれちゃったの?」

「・・・うん。」

「お名前言えるかな?」

「・・・あいか。」

「アイカちゃんね。私はヒメだよ。よろしくね。ここは寒いからあったかいところでお母さんが来てくれるの待とうね?」

頭を撫でながら言うと、ぐすぐすと泣きながらも頷いてくれた。アイカちゃんを抱き上げ執務室へ向かう。ここにずっといるよりも執務室に連れて行って、駅内放送でお母さんを呼び出す方が良いと思ったからだ。

執務室に着き、駅内放送はカズマサに頼んだ。アイカちゃんは心細いのか私に抱きついたまま離れない。まぁ迷子になっていきなり知らない人だらけのところに連れて来られたらそうなるよね。泣き止んでくれたし少しは落ち着いたかな?ソファに腰掛けアイカちゃんを膝の上に乗せる。

「ヒメおねえちゃん、」

「なぁに?」

「ママいつ来るの?」

「きっとすぐ来るから一緒に待ってようね。」

「うん!」

あ、笑ってくれた。やっぱり子供は可愛いな。そんなほのぼのした雰囲気の中に二人が帰ってきた。

「その子だぁれ?」

「誰でしょうか?・・・もしかして私とヒメの娘ですか!?」

「何言ってるんですか!違いますよ!」

「しっかり避妊はしていたはずでしたが・・・」

「怒りますよ!」

こんなとこで何を言ってるんだか!クダリさんは横でお腹抱えて笑ってるし。まったくもう。放っておくことにしよう。

「アイカちゃん、クッキー好き?」

「すき!」

「ランクルス、私の鞄からクッキーの袋取ってきてくれる?」

すぐにランクルルスが持って来てくれた。今日のクダリさんのおやつにと思って多めに作ってきたのだ。それをアイカちゃんに渡すと嬉しそうに食べ始めた。

「おねえちゃん!これすっごくおいしい!ヒメおねえちゃんが作ったの?」

「そうだよ。気に入ってもらえて嬉しいな。」

「すごーい!おねえちゃんにもあげる!」

あーんとクッキーをこっちに差し出してくるので、そのままぱくりと食べた。それから食べさせ合いっこをしたり、アイカちゃんのお話を聞いたり。

「私とヒメに子供が出来たらあんな感じなのでしょうか?」

「そうなんじゃない?」

「あぁ、素晴らしいです!子供と遊ぶヒメも大変可愛らしいです!」

そこにアイカちゃんのお母さんらしき人が慌てた様子で執務室に駆け込んできた。

「ママ!」

アイカちゃんのお母さんは何度も私達にお礼を言いながらアイカちゃんと出て行った。よく地下鉄を使うと言っていたからまた会えるのが楽しみだ。見送り終わった後、私の横にノボリさんが来た。

「私子供はヒメによく似た女の子が欲しいです。」

「いきなりどうしたんですか?」

「ヒメとあの子を見てそう思いまして。娘を嫁には出したくありませんが。」

「でも私がノボリさんと結婚するかは分かりませんよ?」

いつもノボリさんにからかわれてばっかりだから、なんだか少し意地悪をしたくなったので思ってもいないことを言ってみた。

「おや、私が貴女を手放すとでも?死んでも離しませんよ。残念でしたね。」

目を細めながらにやりと口角を上げたノボリさん。やられた、からかうつもりが逆効果だっだみたいだ。私は自分の顔が真っ赤になるのを感じながら俯いた。

「黒ボスすっかりヒメベタ惚れですねぇ。」

「お似合いだしええんちゃう?」

「ノボリすっごく幸せそう!」

後ろではこんな会話が行われてたなんて、私はいっぱいいっぱいで知りもしなかった。

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