30
「早く帰ってこないかなぁ。」
ぽつりと部屋の中にぼくの声が響く。ヒメが来てからあんまり家に一人きりになることがなかったから、ひとりぼっちがこんなに寂しかったなんて忘れてた。
ノボリがヒメを病院に連れて行ったって聞いて、ぼくも仕事が終わってから行こうと思ったけどノボリが一緒ならきっと大丈夫だと思ったから先に家で待ってることにした。
がちゃりと玄関のドアが開く音がしたから急いで玄関へ向かった。そこにはずっと待ってたノボリとヒメがいた。
「おかえり!ヒメ大丈夫!?」
「はい、もう大丈夫です。心配かけてしまってごめんなさい。」
よしよと頭を撫でるといつもの可愛い笑顔で笑うヒメがいた。もう体は大丈夫みたいだ。ほんとに良かった。
いつまでも玄関にいるわけにもいかないからぼくらはリビングに移動した。ソファに座ると、僕の向かい側にノボリ、その横にヒメが座った。
「クダリ、お話したいことがあります。」
「なぁに?」
ノボリとヒメが顔を見合わせる。ノボリは少しだけ笑って、ヒメはもじもじと恥ずかしそうに下を向いた。これってもしかして・・・。
「私達お付き合いすることになりました。」
「ほんとに!?いつからなの!?」
「つい先程からでございます。」
「おめでとう!ぼくもすっごく嬉しい!」
「クダリさんありがとうございます。」
そっかそっか!
やっとノボリもヒメに好きって言えたんだね。自分のことみたいに嬉しいな。あ、でもこれから二人が付き合うのにぼく一緒に住んでて良いのかな。邪魔にならないかな?考え込んでいるとノボリにクダリ、と声を掛けられて顔を上げた。
「貴方が考えていることは分かります。どうせ私達に気を使ってここに住んでても良いか悩んでいるんでしょう?」
「う・・・。」
ぼくの考えていることなんでこんなにノボリに筒抜けなんだろ。
「え、クダリさんそんなこと思ってたんですか!?そんなの嫌です、ここにいて下さい!」
私の家じゃないのに偉そうですが、と付け加えるヒメ。
「ほんとに良いの?」
「当たり前です。」
「勿論です。」
そう即答してくれる二人。あと、ぼくもう一つ気になってることがあって、今までヒメのことぎゅってしたりとか後ろから抱っこしてたりしたけどそれは大丈夫なのかな?ノボリがだめって言うならやめなくちゃ。そのことを聞いてみると、
「えぇ、ヒメが嫌でないなら私は構いませんよ。」
「私も全然大丈夫ですよ。クダリさんのこと大切なお兄ちゃんみたいに思ってますから。」
良かったぁ。ぼくもヒメのこと可愛い妹みたいに思ってるからいきなりだめって言われたらすっごく寂しいもん。
「ありがと!ノボリとヒメが結婚したらほんとにぼくの妹になるね!」
「そうすると戸籍上は妹ではなく姉になるのでは?」
あ、そうなるのか。でもいいの、家族ってことに変わりないから!ふふ、早くそうなって欲しいな。
「け、結婚って話が早過ぎます!」
わたわたしながら言うヒメ。前から思ってたけどヒメってこんなに可愛いのに今まで誰かと付き合ったことないのかな?いちいち反応が初々しいもんね。まぁそんなところもノボリは可愛くて仕方がないみたいだけど。
「おや、私は貴女との結婚も考えておりますよ。貴女はお考えではないのですか?」
「う、その、私だってノボリさんと結婚したいですっ。」
「ヒメ、今日は一緒に寝ましょう。」
あ、ノボリがヒメのこと抱き締めた。今までノボリが付き合ってきたの見てきたけどこんなに幸せそうじゃなかった。それだけヒメのこと愛してるんだろうな。なんだからぼくまで幸せな気分になってきた。ずっとずっと二人が一緒にいれますようにって、誰に祈るわけじゃないけどそう思いながら二人を眺めてた。