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「ランクルス、行くよー。」
今日は仕事はお休み。ランクルスに声を掛け、戸締りをしたか確認して家を出る。なぜ休みの日に出掛けているかというと、仕事のノボリさんとクダリさんにお弁当を届けに行くのです。本当は仕事の日も出来たらいいんだけど、まだ今は朝食を作るので手一杯。
痩せているのに意外に大食いな二人のために大き目のお弁当をふたつ、そしてバスケットにホットサンドを作ってみた。多い気もするけど余ったらカズマサとかクラウドさんに食べてもらえば良いよね。
「失礼します。」
コンコンを執務室のドアを叩く。中からどうぞ、と返事が返ってきたので開けるとそこにはノボリさんとクラウドさんがいた。ん?何か変だ。
「ヒメ、来て下さったのですね。」
あ、違和感発見。
「クダリさん、何でノボリさんのコート着てるんですか?しかも喋り方まで真似して。」
「今日のヒメは可笑しなことを言いますね。」
いやいや、私可笑しくなんてないもん。可笑しいのはクダリさんの方です。ソファに座った私の横に来て、むうっとした頬を手袋を外した手で撫でる目の前の黒いコートの車掌さん。ほら、やっぱり違う。
「私のことからかってるんですか?騙されませんよ。」
「ヒメさっきから何言うてるん?それ黒ボスやないか。」
「クラウドさんまで!だってノボリさんのコート着たクダリさんじゃないですか!」
「は?」
「何故そう思うのです?」
「何故って、そもそも顔が違います。そりゃあ二人は顔よく似てるのでぱっと見は気付きませんでしたけど、声だってノボリさんの方が低いですし、クダリさんの方が手の体温が高いです。」
クダリさんに飛びつかれ、ぎゅうぎゅうと抱き締められられる。
「ヒメすっごい!気付いたのヒメだけ!」
下がっていた口元が上がり、いつものクダリさんに戻る。うん、やっぱりそっちの方が良いな。クダリさんはこうでなくちゃ。抱き締められたままクダリさんの頬っぺたをむにむにと触る。
「何でそんなことしてたんですか?」
「ぼく今日はシングルの気分だったの。だからここに来てからノボリと代わってもらった!今までもたまにしてたんだけど、気付かれたの初めてだったからびっくりしちゃった。」
ひょいっと体ごと持ち上げられ、ソファに座るクダリさんの足の間に下されお腹の前に手が回ってきた。
「いやー、びっくりや。全く気付かんかったわ。それよかその恰好ええんか?」
「え?ああ、家だといつもこんな感じなので大丈夫ですよ。そういえばノボリさんいつ帰ってくるんですか?」
「黒ボスはダブルトレインに行ったからもうすぐ帰ってくるで。ちゅうか、いつもって白ボス家でそんなにくっついてんの?」
「いいでしょー!」
「黒ボスも苦労するわ。」
「ノボリはぼくがその気ないって知ってるから問題なし!」
「さいですか。」
「何の話ですか?」
「なんでもないよ?ノボリが帰ってくるまでヒメのこと独り占めする!」
気になるなあ。それにしてもクダリさんはほんと甘えんぼだなあ。でも意外とノボリさんも甘えただったりする。そんなことを考えるとノボリさんに会いたくなってきた。朝会ったばっかりなのに。早く帰ってきて欲しいなあ。