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抱きかかえたヒメをソファへ下ろすと、小さくて白い手が私のコートを掴んでおりました。手の持ち主の方を見やると、大きな目でこちらを見上げるヒメがいました。
「ノボリさんっ、助けにきてくれてありがとうございました。ノボリさんが来てくれなかったら私どうなっていたか・・・」
考えるのも恐ろしいのかふるふると身震いをする彼女を抱き寄せると、抵抗せず私の腕の中に収まります。
「当然のことでございます。何もなくて本当にようございました。私あれほど腸が煮え繰り返るような思いは初めてでございました。ヒメは何でも一人で頑張ろうとするのですから、もっと私達に甘えて良いのですよ?」
「お仕事も住むところももらって十分甘えてますよ。これ以上は罰が当たりそうです。」
「罰など当たりません。私が頼って頂きたいのです。」
「ありがとうございます。」
抱き寄せる腕に少し力を込めると、すりすりと胸元に擦り寄って来るヒメ。そんなに可愛らしい行動を取られると私勘違いをしてしまいそうです。一定のリズムでトントンと背中を叩いていると、ヒメの瞼が落ちてきてうとうとし始めました。先程色々なことがあったので気疲れしているのは仕方がないことでございます。
「ヒメ、疲れたでしょう?少しお休みなさい。」
「ごめんなさい、ちょっとだけ・・・」
完全に瞼が落ちて、すうすうと小さな寝息がすぐに聞こえて参りました。私は再度ヒメを抱き上げ、仮眠用のベッドに下ろししっかりと毛布を掛けました。
先程も思っていたのですが、ヒメは驚く程軽かったのです。女性というのはあんなに軽いのでしょうか?小さな背丈、少し力を込めると折れてしまいそうな華奢な身体、真っ白い肌、大きな瞳、ふっくらとした唇、さらさらの髪の毛、彼女を構成する全てが私を魅了して止まないのです。いつの間にこんなにもヒメのことを愛しいと思うようになっていたのでしょうか。私もいい年齢ですので何人かの方とお付き合いをしたことがございますが、どの方にもこんな感情は抱いたことありませんでした。やはりヒメだけにしか思えないのです。
気持ち良さそうに眠るヒメの額に軽くキスを落として、起こしてはいけませんから静かに部屋から出ます。起きた時には私の大好きなあの笑顔を見せて下さいまし。