ノスタルジックガール | ナノ

20

「お客様、一体何をされていらっしゃるのでしょうか?」

いつもとは違う地を這うような低音が響いた。そこには冷たい視線を向けるノボリさんとシャンデラが立っていた。その姿に安心したのか私は溢れ出る涙を止められなかった。
すると、私の上にいたエリートトレーナーさんと傍にいたレパルダスが車両間を繋ぐ扉に勢いよく叩きつけられる。まともに動かない頭でやっとシャンデラのサイコキネシスだと気付いた。ノボリさんが私のところまでかつかつと革靴を鳴らしながら近づいた来た。

「もう少々お待ち下さいまし。」

と、頭を優しく撫でながら彼のところへ歩いて行く。シャンデラも私の方を見て、大丈夫?と言ってくれたので、少しだけ笑って返す。
ノボリさんは一つ前の車両のミニスカートさんを呼び、彼女の手持ちのムシャーナのテレポートでエリートトレーナーさんをどこかにとばしているようだった。

その一連の流れをまだぼんやりとした思考回路の中で眺めていると、シャンデラは大人しくモンスターボールに戻り、少し早足でノボリさんがこっちに近づいて来る。

「来るのが遅くなって申し訳ありませんでした。」

私の足元に跪き、私なんかよりずっと辛そうな顔のノボリさんと視線が合う。なんでそんな顔するの?ノボリさんが謝ることなんかじゃない。私はそれを伝ようとしたがうまく言葉にならず、また涙が目尻に溜まるのを感じ、ぶんぶんと頭を横に振ることしか出来なかった。

「すっかり赤くなってしまいましたね。」

手袋を外して少し低めの体温のノボリさんの指先が私の目元をなぞる。あったかいなぁ。その気持ち良さに目を閉じる。

「そろそろホームに着きますが立てますか?」

差し伸べられた手を掴み、立ち上がろうとするがうまく立ち上がれない。間抜けなことに先程の出来事で腰が抜けてしまったようだ。

「ごめんなさい。ちょっと休んでから行くので、先に行っててもらえますか?」

はぁ、と軽く溜息をつくノボリさん。呆れられちゃったかな、面倒な女だなって思われたかな。なんだか自分の被害妄想に落ち込んでいると、ふわりと宙に浮いた。

「ノ、ノボリさん!?降ろして下さい!」

ノボリさんに抱きかかえられている。所謂お姫様抱っこというやつだ。ノボリさんの綺麗な顔がすぐ近くに。恥ずかしくて顔を背けるとヒメ、と呼び掛けられる。そろりと顔を向けると、

「私があなたを置いていくような男とお思いで?面倒だなんてこれっぽっちも思っておりませんよ。」

う、思考を読まれてる・・・。
私を抱きかかえたままトレインを降りて執務室に向かう。入る前に大きな手が私の頭をノボリさんの胸の方に引き寄せる。真っ赤な目が見られないように配慮してくれたのだろう。どこまで優しい人なの?ぎゅうっと胸が締め付けられる。

ドアを開けると、クダリさんやカズマサ、クラウドさんが何か言っているのが聞こえたが、お構いなしにつかつかとサブウェイマスター専用の執務室へ入り、ソファの上にそっと降ろしてくれた。

ちゃんとお礼を言わなくちゃ、






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