ノスタルジックガール | ナノ

14

バトルサブウェイで働くまで一週間の時間があったので、スーパーシングル、スーパーダブル、トウコちゃんとマルチ、スーパーマルチに挑みに行った。やっぱり本気のノボリさんとクダリさんは強くて、どちらも接戦だったけど負けてしまった。スーパーマルチはトウコちゃんのポケモン達のおかげでどうにか勝利出来た。あんなドキドキして、楽しいバトルは久しぶりだったな。トウコちゃんにも感謝しなくちゃ。


今日は特に予定もなかったので、ふと思い立って二人にお弁当を作って持って行くことにした。いつも買って食べてるって言ってたから、作って行ったら喜んでくれるかな?ライブキャスターに連絡を入れようと思ったけれど、びっくりさせようと思って内緒で行くことにした。まあ行ってみて分からなかったら鉄道員さんにどこにいるか聞いてみよう。





「あのー、すみません。」

後ろから呼び止められ振り向くと、そこにはお弁当のバスケットを持った凄く可愛い女の子がいた。傍にはランクルスを連れている。何か困っているのだろうか。

「どうしました?」

「ノボリさんってどこにいますか?」

ああ、この子もか。ここ最近そんな女性が増えてきたな。僕たちの仕事を増やさないで欲しい。

「黒ボスは業務中ですよ。」

「そうなんですね。クダリさんもですか?」

「そうです。なのでお通し出来ません。」

黒ボスが駄目なら白ボスでも良いなんて。やっぱりこの子も二人の外見しか見ていないのか。

「お弁当を作って来たんですけど、渡して頂けませんか?」

ここはしっかり言っておかないと、迷惑するのはボス達だ。

「ボス達に会うのを取り次いだり、そういった差し入れはを渡したりすることは一切お断りしています。ボス達はそれで迷惑しているんです。今後はやめてもらえますか?」

「・・・わかりました。ご迷惑おかけしてすみませんでした。」

悲しそうにぺこっと頭を下げて帰って行く彼女。その後ろをランクルスが焦ったようにして着いて行く。いつもの女の人達だったら怒ったり喚き散らす人ばっかりだから、そういう反応がくると思っていたので拍子抜けだった。それと同時に罪悪感で胸がちくりとした。





「カズマサ、お疲れ様です。」

「おつかれー。」

執務室へ戻ると休憩に入ったボス達がいた。一応報告しておこうか。

「さっきですね、ボス達にお弁当の差し入れを持って来た女の子がいたんですよ。可愛いくて良い子みたいだったのでお断りしたらしょんぼりして帰って行ったので少し気になりまして。」

「ふーん。カズマサがそんなに言うの珍しいね。どんな子だったのー?」

「小柄な子でランクルスを連れてましたよ。」

がたっと大きな音がしてその方向を見ると、黒ボスが珍しく焦ったような顔をして立っていた。白ボスも慌てて、

「カズマサ!その子どっちに行った!?」

「え?ギアステーションを出て行くところまでしか見ていませんが・・・」

「私達少し席を外します!」





私はギアステーションを出てすぐのところの公園でぼうっとしていた。

「連絡も入れずに行ったのも悪かったよね。でもあんなに二人が凄い人だったなんて知らなかったよ。でもお弁当渡したかったな。」

ランクルスを抱き締めながらぽつりと呟くと、ランクルスが大丈夫?と頭を撫でてくれた。

「大丈夫だよ。ありがとうね。」

そう返すとランクルスが、上から何か来るよと、伝えてきた。上を向くとアーケオス見えて、私達の前に降りてきた。その背中に乗っていたのは見慣れた対象的な二人だった。

「ヒメ!お弁当渡しにきてくれたんでしょ!?ごめんね!」

ぎゅうっと抱き締めてくれるクダリさんと、

「折角来て頂いたのに申し訳ありません。鉄道員達には言っておくのでこれからは大丈夫ですよ。ところでヒメ様が作って下さったお弁当を頂いてもよろしいですか?」

と、優しく撫でてくれるノボリさん。きっとさっきの駅員さんが伝えてくれたんだろう。私の目の前でお弁当を美味しいと言って食べてくれる二人を見て、泣きそうになってしまったのはここだけの話。


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