かきもの | ナノ



心のつややかさは毛並みのうつくしい狼のそれに近く、見せる自意識の強さはやはり、野生に生きる獣のそれだ。「僕たちがどれだけしあわせか神さまだって知らないよ」、吹雪がときたまそんなことを言うのだが、おそらく吹雪も自分も神さまの存在などに重きを置かない。
愛しあうというと背伸びしすぎるし、恋というとまた違う、男女の言葉で表せないならば俺たちはどうして一緒にここに坐っているのだか、解らず頭を抱え込むときがある。
(俺たちがどれだけしあわせか?そんなの俺たちだって知らないさ!)
そんなときの吹雪は非常にゆるりとしている。ぼうっとしながら風の方向を読み、手を伸ばしては引っ込めたりして雲を掴もうとする。
「……それは共存だよ」
雲を掴めない手は俺の背に置かれ、背骨をなぞって行き来した。共存、と吹雪の言葉を繰り返すと彼はそうだよと肯定し、あの雲はなんだかキャプテンの作るおにぎりみたいにいびつだねえと笑った。
「豪炎寺くん、サッカーするのに理由が要るの」
「要らない、」
「なら、難しく考えることないんじゃない」
吹雪は俺の背から手を離して伸びをひとつした。やってごらんよ、そう言うので俺も両腕をぐっと上に伸ばす。
「ねえ、そうすると自然に背筋も伸びるでしょう」
腕を降ろして俺は頷いた。吹雪は満足そうな顔をしている。
「僕たちが一緒にいるのも、自然なことなんじゃないのかな」
難しく考えることないよ、吹雪は再度言った。柔軟な、猫、にすら見える。
「キスしたいな。たくさんたくさん、ふたりだけのことについて考えながら」
吹雪の手が俺の手と重ねられた。神に性別は無いと聞く。「僕たちがどれだけしあわせか神さまだって知らないよ」……「ふたりだけのことについて考えながら」……吹雪は強く優しかった。人びとの嘲罵・冷笑を介さない温かい両手、今指を絡めている。その言葉を潤す唾液の温度を知りたくて俺は唇を寄せた。
「痛くても泣かない、豪炎寺くんはえらいねえ……」
解かれた指先がまた、宥めるように背を愛撫している。







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