かきもの | ナノ



大きな目でどれだけたくさんのものを見てきたのだろう。ゴールデン・エイジだなんてコーチは言い、それは自分たち三つ子にも大いに当てはまるのに、彼はそれとはすこしばかり違うのだった。あこがれが変えていた。名前のとおりに翼で翔る。ほんとうに、見くびっていましたね、と竜持は彼の前で笑った。
「えっ、ぼくなんかぜんぜん」
「キャプテンでしょ、たまには胸を張ってくれないとぼくらが不安です」
謙虚、ぼくたちに程遠い。肉食獣という名にも相応しくないけれど、まだ子どもなだけだ。そういって相手にしていない大人は痛い目に遭うのだということを、いちばん知っている。なんて締まりない顔をしているのだろう、この人がぼくらを引っ張ったなんて、今になっても信じがたいものだと竜持は思う。だけどそれが真実なのだ。
「ほんとに怖かったんだよ、まさに悪魔ってかんじで」
「ふふ、悪魔もずいぶん丸くなってしまったものですよね」
「それって竜持くんたちも成長したってこと」
「ええ、たぶん」
眺めるノートパソコンの中で彼は走る。だが事実として、決して画面上のことがその通りに起きるとは限らないのだった。不可知……それは書物にないことを学ぶこと。その点で成長したのは誰のおかげか、ひとりはコーチ、もうひとりは竜持だけではなくチームメイトのみなが解っている。
「ありがとうございます」と竜持は礼をした。戸惑うようにする。契約いらずで悪魔に手を貸させた人だった。天命という意味で命は懸けていたかもしれない。おもしろい。虎太よりも誰よりも、コーチに根が似ているのだった。
「すばらしいチームでした」
「今もね」
「……ええ、今も」
彼はどのみち強い獣に化ける。平面のシミュレーションで出せない未来という奥行きが、今の竜持の目にはありありと映る。数字にあらわせない感情論だって彼の前では信じていたいと、学んだのはそういった情熱だったのではと思いながら、竜持はノートパソコンを閉じた。







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