ねためも | ナノ


ちょっぴりホラー




「絵本の中ではねえ、お墓に枝を挿してやると生き返ったの。お父さんお母さん兄弟みんな生き返ったの、いじめられなくて良くなったのに」
こいつは馬鹿だと思った。スコップ片手に有りもしない墓を掘っている。ここはグラウンドだって言ってるだろう。いずれコンクリにぶち当たって泣くんだろう。蓋の無い棺を見つける顔は想像に難くない。
「なぜ穴を掘るんだ」
「生き返っても出てこられないんじゃ困るでしょ」
はいはい現実的だ。無理に折った桜の枝が突き刺された土壌の揺らぎに惑っている。おかしいなあおかしいなあ、吹雪がべそをかきはじめる、マフラーが涙を吸うのは何分後か何秒後か。
(見ていてね豪炎寺くん、証明したげる、)
馬鹿だなお前は、頭にくるよ。

ああああああ、叫んだ吹雪は倒れかかった桜の枝を引き抜いた。だめだ!だめだ!だめだ!これじゃあ全然、だめ!どの枝だって同じだろ、舌打ちを堪えて放り投げられた小枝を拾ってやる。子供の癇癪と変わらないじゃあないか。
「じゃあ何、どの枝なら生き返るんだ」
仕方無いねと言わんばかりの優しいイントネーションで語りかけてやる。すると彼は差し出した右手をひっつかんで、ぎらついた目でこちらを見据えた。
「あああ良かったァ」
「え」
「豪炎寺くんの指は細いねえ、長いねえ、きれいだねえ、スコップだしちょっと時間かかるけど待っててねえ」




120215 中指とディザイア




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -