ねためも | ナノ


D.Gray-man




目先の幸せを求めて駆けていたあの日とは違って、今は随分と鬱屈した毎日を過ごしている。隣にいた人がいなくなった代わりに今はもっとたくさんの友人がいるのだが、割にどうにも嘘くさい。
(どうせ家族ごっこだし、なんて思ってる僕はなんだか子供じみてて嫌だよなァ)
ごちゃごちゃと物を置く癖は親愛なる彼がいなくなってからずっと続いていた。動ける空間が狭いのは、どちらかといえば包容されているような安堵を与えていてくれたからだった。しかしながらオニキスの目を持つ彼は孤独を気取っているのに空っぽの部屋で、初めてあそこで眠った日は風邪をひくほど寒かったのを覚えている。
(だけど、僕の部屋よりもっと淋しくなかった。そういう点では温かいといえるのかな)

「神田、ひとりで淋しくないの」
「何だお前、頭沸いたんじゃねえのか」
「……あは、そうかもしれない」
嘘くさいながら同じ寝台を共有して、家族ごっこの中でも誰かを性を交えて愛することを学んだ。神田は黙って壁をねめつけている。裸の背をつついて、そういや僕はあんまり蕎麦好きじゃないんですよねえと嘯くと、うるせえ死ね、と透明のゼラチンみたいな声で言われた。それがちょっとでも幸福に思えるということは、僕はやっぱりおかしいのかもしれなかった。





110926 枕元で戯れる




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