ねためも | ナノ


アンケートお礼だったもの






円堂の家のカウチは座り心地がとても良かった。しかし笑い話のように自分たちは緊張で強張り、さきほどやっとのこと繋いだ手は今にも離れそうになっている。
(……だいなしだ)
会話を続けようとした円堂は残念ながら数分前にその奮闘をやめてしまっていた。彼に申し訳ないと思いながら、いつも以上に無口な自分に腹が立った。友人だったころは話だってもっと近くでできたのに、ふたりが腰掛ける間の距離は接近する心の距離と反比例して離れていく。

「ご、豪炎寺、」
「……このままで、」
振り絞った声はちいさく掠れていた。ただ終わりが来ることを怖れて、握った手の温度を離せずにいた。こちらを盗み見た視線は気まずそうにすぐ逸らされ再び頼りなく宙に浮く。それでいて強く握り返す彼の素直なやさしさ、伝わる鼓動の速さに泣きそうになりながら、俺はカウチに座る互いの距離を縮めるべく照れくささをクーラーの風と一緒に流してしまった。
(きっとこの瞬間、ふたりは何よりも強くなれるに違いないんだ。)






110816 淡い旬




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -