ねためも | ナノ







(豪炎寺くん……キス、するの?
……駄目か、
ううん。僕も、したい。)


豪炎寺くんは絶対に唇にキスをしません。
額だったりほっぺただったりして、
そのやわらかな薄紅いろは合わされることがありません。
鋭くシトリンのように光を得る瞳を
閉じぬままに彼はキスをします。
不安そうに
僕の腰にしっかり手を添えて。
「豪炎寺くん、」
「なに」
「大丈夫だからね」
僕がそう言って気丈に笑ってみせると
彼は針のようにうつくしい水晶を
目から零してみせるのです。
ほんとうにきれいだけれど、僕はそれを言いません。
なぜならば彼はきっと
この水晶を硝子と形容するでしょうから。

豪炎寺くんはキスをします。彼の唇が奏でる小鳥のさえずりに似た心地よい音、
その珠のような味わいを
感じ得ることができないのはなぜでしょうか。




110719 さびゆく黄金




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -