吹→染→豪
僕は君が殺したいほど憎くて堪らなくなるときがある。それは例えば君の横顔に鮮やかに浮かぶ唇の赤を見いだしたときだったり、シュートを決めたときぱしんとハイタッチしたあの瞬間だったり、着替えようとしてユニフォームの裾に手を遣ったときだったりするのだけれど。僕の憎しみはあまりに抽象的ゆえ、とどまることを知らないのだ。底無し沼に足を踏み入れたその感覚があのときからずっとずっと消えないんだ。君は僕がどれだけ想いを募らせているか知っているんでしょう。だのに彼は君の話をしては何ともつかない一種の恍惚に似た不可解な微笑をして僕のそのまた向こうの景色を見てしまうのです。そのたび訪れる僕の内面の死と再生は断続的に続く一方で、僕の心はもう疲弊しきって真っ直ぐ彼を見つめることもかなわない。僕の障害となるのはたった君だけなんだ。きっと君さえいなくなってくれれば、僕は彼の程良く鍛えられた官能的な腕をとってルビーの心臓が透き通った波のように打つその胸に顔をうずめることだってできるはずなのに……
思い違い
110613 憎悪の片鱗