ひ、と引きつった声が出てしまったので俺は慌てて口元を押さえた。後ろから腰に手をまわしてきたヒロトが、風丸くん……びっくりした?としとやかに微笑んで俺の首筋に薄い唇を寄せている。明るい紅色の髪の毛もやわらかそうだし、セックスのとき染められる頬の白さはすばらしい。そして今自分のとふんわり重ねられた手指の細さといったら人形めいたエロスに溜息が出るほどだというのに、俺は彼がこの瞬間、その揃った歯でナイフを咬んで俺に向けているような気がしてならないのである。110606 心的外傷