ねためも | ナノ







俺はまだ園に来て間もない頃、子供らしからぬ冷めた目で世界を見つめていた。あの「おひさま園」なんていうふざけた看板を引っ剥がしたら「死を待つ者の家」という揶揄の文字が書かれているのだと思っていた。
園……死を待つ者の家の唯一の住人である子供たちは、自分の運命を知らず馬鹿みたいに甲高い声を上げて広い庭を走り回る者と、自分の運命を受け入れられず常に澱んだ悲しみと侮蔑を纏わせた者とに別れていた。大半は前者であったがひとりふたりはそうでない者が居て、俺も後者の一員であった。大人に特別優遇されるひとりの子供を見て、ああこいつは近い内に死ぬんだなと思った。だからあいつはあれほどに蝶よ華よと可愛がられ、だからあいつはあれほどに子供でありながら達観したような表情を時たま見せ、だからあいつはあれほどに死人めいた肌色で、だからあいつはあれほどに影を強く背負った不安と罪悪ばかりの目を地べたに投げかけて孤高にブランコを漕ぐのだと……

思えばあれが、俺が基山ヒロトを初めて見たときだったのだ。








110605 邂逅




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