ねためも | ナノ







僕の脚はもう駄目だよ。もう歩くことも立つことすらままならないんだから。ボールを蹴ろう?だって?ふざけるのも大概にして。死んだも同然だ。死んだも同然なんだよ。僕を見ないでくれないかな、……僕を見るな!


豪炎寺は胸倉を掴まれても吹雪を見つめていた。天使、死ぬ、天使は脚を亡くしても飛べるのに。雪を降らすこともできるのに。目の前の天使はあまりに貪欲な目をしているので豪炎寺は天使に失望した。天使とは無欲だと思っていた自分にも落胆した。だってこいつは一昨日まで俺の身体を愛撫していたじゃないか。健在していたころの脚を自分の脚と絡めていたじゃないか。それが無欲?なんて馬鹿馬鹿しい、


花は咲き誇ると破滅の一途を辿っていくばかりなんだよ。それはすごいスピードで誰の目にも分かりうる変化で、僕もそうだ、僕も劣化していっているんだ、枯れていっているんだ、だから見ないで、不完全な死に際を見ないでよ!見ないでよ……


吹雪は豪炎寺の胸に額を寄せた。ちょうど背中が見えるので豪炎寺は彼の浮き出た肩甲骨をそっと撫でた。吹雪はちいさく息をついた。いいなあいいなあ、豪炎寺くんは歩けて……いいなあ、無いものねだりは愚の骨頂であると思われる。豪炎寺が無言のまま背を撫で続けていると、心を読んだかのように吹雪は言った。

無いものねだり、なんてことない。






この羽根をもぎ取ってもいいよ、(その代わり君の両脚を僕に)




副題:剥製は射精する




110514 天使は事故死する




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