某映画パロ





吹雪のこころには
吹雪ひとりしかはいれません
吹雪は毎日同じことをします
そうでなければ
こころがこわれてしまうからです
おうちにかえったらてをあらってうがい
それからテーブルについて
マグカップを両手で持って
豪炎寺がいれてくれるあまいココアを待ちます
とろんとした目で、対面式キッチンの向こうをぼんやり見つめながら
そうしてできあがったミルクココアをじゅうにぶんに冷ましてから
ちみり　ちみりと飲むのです。
宝物を大事に磨くように


その日もまた
吹雪はおうちにかえっててをあらいうがいをしました
それからテーブルについて
マグカップを両手で持って
豪炎寺がいれてくれるあまいココアを待ちました
彼のついたテーブルの斜向かいには
血を流して突っ伏した豪炎寺の姿がありましたが
吹雪はココアを待ちました
彼には豪炎寺の姿を捉えることができません
吹雪のこころには
彼ひとりしかはいれないからです
いつまでもマグカップに手を添えていました
とろんとした目で
対面式キッチンの向こうをぼんやり見つめながら




こころがこわれるじゅうびょうまえ




110509 水星