ねためも | ナノ



吹豪第一弾






いつもそのたびに、彼は懇願する。

僕の名前を呼んで。たったそれだけでいいんだ。
君が誰のことを思っていようが関係ないから、体を重ねて、僕を呼んで。


呼び慣れない。至って呼び慣れない。今だけだ、彼を名前で呼ぶのは。ほんの数十分の辛抱ではないか。
「アツヤじゃない、よね。そうだよね。…豪炎寺くんは、今僕と一緒に番っているんだよね。豪炎寺くんとセックスしているのは僕、でしょう?他の誰でもない」
彼はまじないか何かをするように、何度となく…おそらくは自分に言い聞かせた。
士郎、士郎。
呼ぶたびに彼は消え入るような笑みを浮かべる。泣きそうな笑みを。とり残されることの不安定さが、存在の不確定さが彼をここまで。
「吹雪士郎、お前は、本当、に…」
今こうして自分を穿つ彼の目があまりにも虚ろに沈むので、俺はそこで口を噤んでしまった。




110417 渇く




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