生存確認 | ナノ


いつの間にかのこと……テレビィのなかに可愛い子供……ずうっと好きだったんだよう。第……何話……きみはぼくを見て珍しくも楽しそうにする。それはぼくだってたのしいのが明白。暴力が存在しない代わりに殺人的な純潔がああ、子供の笑顔に垣間見えます。ぼくはそれが欲しいなあとむかしっから、むかしっから、思っている気がしてならぬ。夕焼けの公園をピンクと緑に変える。ぬるぬるズブズブと両手が画面の柵をとおりこしていく。綿菓子を作るようにぐねぐねに空を掻き乱す。夜も歩いているのに早くお家に帰らないきみが悪いのさ。箱の外の男は神であった。神は贄を求める或いは、罰を、罰を……天罰。否これは慰めであり恩寵であり、この子供は神に愛される幸せな子供。テレビィのなかで子供が消えてもだあれも騒がない。然れども寂しがりのぼくは来週が来なくなるのは嫌……だから隠さないで帰してしまう。油性ペンで頬と胸と腕と脚とにぼくの名前を書いた。服の裾を少しもらった。今こんなに怯えた目をして泣いてるのに、たった10セコンドのあいだで泣きやんでいるんだもんなあ。また笑ってるんだからなあ。だからさ、ぼくは、見える記憶が欲しいって訳なのです。先週は腕と脚とだけに名前を書いてたのが、すっかり消えているもんだから哀しい哉。哀しい哉。来週見たとき名前がやっぱり消えていて、もし服の裾がなおってたりなんかしたら、今度は火をつけるし殴ってみたりするだろう。それでもこのお話が終わるまで、テレビィのなかでずうっと暮らしてもらわなきゃ、寂しいなあ。神に愛されるということは誰も言及することのできない領域に到達している。喜ぶべきも嘆くべきもなく、なるように委ねるしかないのだ。そうだぼくだけはあのピンクと緑の夕焼けを知っている。なんということだ、ずぼりと取り出した両手がまだあの柔らかい身体を匂いを覚えているというのに。




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