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頬に触れる誘惑の吐息(カグミコ)








欲しかった。どうしても欲しかった。
瞳を閉じては、この手の中に、自分だけの、あのクソ女を閉じ込めているビジョンしか浮かんでこなかった。

肌と肌を触れ合い、密着させていたい。ミコノを、自分から離れないようにしてしまいたい。
その為には、自分の匂いを覚えていてもらわなければならなかった。

ミコノの匂いは完璧だ。このなんとも言えない、花の蜜のような、甘ったるく、嗅覚さえ失わせる匂い。一度嗅いでしまっては、二度と忘れることができない、その香り。

臭い、そう思っていた。

だがその匂いを、カグラはもう覚えてしまった。
ダメだ。もう遅い。こうなってしまったら、自分から逃れることなど不可能だ。どこにいても見つけてやる。



「あ、の………」



腰を落とし、後方へと後退りしているミコノの元へ、カグラはじりじりと近づいていく。
ミコノが動く度に、彼女の匂いが鼻を掠め、彼の嗅覚が絶頂を迎えた。

そうして動きを止めたカグラを見て、ミコノは不思議に思った。
目の前にいる男に会うのは、とても怖い。怖くて怖くてたまらない。だが、目を合わせた時に、他の何も見えない、お前しか俺の視界には入っていないんだという、カグラの無言の圧迫感が、ミコノの心を締め付けた。



(逃げ、られない)



その匂いを忘れられない。
その目を忘れられない。



「抱きしめさせろよ、クソ女」

「嫌って言っても、抱きしめるんでしょう?」



ふいに口に出した一言で、ミコノはとても後悔した。


この力強さ。これは確かに、男の腕の中だ、もう逃げることはできない。














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