輪るピングドラム | ナノ

冷えた部屋に甘い熱(晶苹)








「こちらの番号になりますね、ごゆっくりどうぞ」



学校帰りに、晶馬と苹果は待ち合わせをし、二人はネットカフェへと足を踏み入れた。
その行き先を提案したのは、苹果。ほぼ個室で、狭い空間で晶馬と二人きりで、密着できる場所といったら、もうここしかないと思い、少しばかり彼女は浮かれていた。

今までだって、多蕗の家の下にいた時等、二人きりになっていた時はあったが、まだ自分は多蕗を想っていた時であったから、晶馬の事を意識していたわけではなかった。
意識するようになってから気付く。
ああ、あの時、もっと早く想いを自覚していれば、晶馬とファイト一発できる機会がたくさんあったというのに。

苹果の頭の中は悶々としていた。



「荻野目さん、何飲みたい?」

「あ、えっとじゃあ、オレンジジュース」

「了解」

「ありがとう」



本当なんなんだろう。どうしてこんなに優しいの。
苹果は胸が踊った。晶馬から手渡されたオレンジジュース。そしてこれから行く二人だけの世界。
昨日、晶馬に会う約束をしてから、実は彼女はあまり眠ることができていなかった。
自分にもこんな感情があったんだって思った。


指定された席に着き、二人は椅子に腰を落とす。


すぐ本当に近くに晶馬がいる。横顔だけでも彼女はついつい、晶馬を見てしまう。近づきたくて、彼に触れたくて。
さて、ここからどうしようか。

カチッと晶馬がパソコンの電源を入れた。
ウィーンと起動音が鳴り、パソコンの準備画面がデスクトップに表示されている。


「ふう」


晶馬はネクタイを緩め、苹果の方を振り向いた。
目を真っ赤にしながら、自分を見ている苹果。
夕べ眠れていなかったのだろうか。何かあったんだろうか。知りたい。

晶馬が苹果の目元に触れた。


「な、何………?」

「目、真っ赤だね。眠れなかったの?どうして?」

「そ、それは、それは…………」




こんなに近くにいるのに。そしてこんな優しい言葉をかけられてしまっては、押すタイプの苹果にとっては、拷問だ。もう我慢ならない。
苹果は勢い任せに、晶馬の両頬を掴み上げ、晶馬の唇へと噛み付いた。

そうして晶馬の唇から離れては、寝不足で真っ赤な瞳と恋する乙女の瞳が混じり合い、瞳は苹果の艶っぽさを表していた。


「荻野目さ………」

「だって、したかったんだもん。悪い?」



間違った事は言っていない。自分の欲求に素直に従ったまでだから。
晶馬は極限状態に陥っていた苹果を自分の元に引き寄せる。


「ネットカフェに行くって聞いて、僕だって我慢してたのに」

「晶馬くん……?」

「声出したらダメだよ。みんなに聞かれちゃうからね」




晶馬は備え付けの毛布を入口に掛けた。
これでもう完全な密室だ。あとは苹果がどれくらい耐えることができるのかにかかっている。











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タイトル・Evergreen




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