ミラが手当を終えた後、ジュードは疲れきっていたのか、ソファーの上ですやすやと眠りについた。
可愛い顔をして眠るくせにと、ミラはジュードの寝顔を見ては、数々の治療の痕跡を目にし、息をついた。
外はもう寒い季節を迎えている。中の暖かさで、窓ガラスが白く曇ってしまうほどに。

ジュードの体は冷たかった。ある意味、体を動かしてきた後ではあったが、怪我を庇いながら、ゆっくりと歩いてきたからだろう。
本当に、いつかしら死んでしまうのではないのかと、たまに思うことがある。

そうさせてはならないのだが。


「お前に何かあったら、私が困る事を自覚しろ。ジュード・マティス」


眠っているジュードへ向けて、ミラはぼそっと呟く。それと同時に、ジュードは寝返りを打ったが、目を覚ますことはなかった。
ジュードの一連の動きにも、ミラは戸惑う姿すら、見せることはなかった。



「……っ…………」


数時間後、傷の痛みと共に、ジュードが目を覚ます。
頭が痛い。頭を抑えようと伸ばした手には、包帯が巻かれている。
またか、またやってしまったかと、少しばかり知ってしまった天井を見上げては、後悔に苛まれる。

彼はゆっくりと体を起こした。
部屋の明かりは暗いオレンジ色に染められていた。カタンとテーブルにコップか何かを置いた音が、ジュードの耳に入り込む。

まだ起きている。この部屋の主は。


「起きたか、以外と早かったな」

「別に寝てたわけじゃない」

「強がるな、酒の飲み過ぎで、頭が痛くなってるだろうに」


ミラはジュードに水が入ったコップを差し出した。
ジュードは無言でそれを受け取り、何回か口に含んだあと、すべてを飲み干さずにミラへとコップを突っ返した。
ジュードのそういう態度にも、ミラはもう何も言わない。これが普通なのだ。


「口が切れて、水が染みたか」

「はぁ。本当にミラって、意地悪だよね。わざと?」


ジュードがそう返してきたということは、図星だったかとミラは思う。
彼女はそのコップに入った残りの水を、ゴクゴクと飲み干した。最後の一滴まで。
ジュードはそれを見て、不適な笑みを浮かべていた。


「何がおかしい」

「別に?なんでもないよ……っ…」

「調子に乗るから、こういうことになるんだ」



ミラは、仕方がないから、もう少し横になれとジュードを促した。
それと同時に彼は、ミラの手首を掴み、しゃがませ、顔が触れ合う距離まで連れてきた。


「別にいいんじゃない、遊びなんだから、一回くらい、やっちゃっても」


声と共に、彼女の唇は彼の唇と重ねられた。
彼女は唇を開かないようにしていたつもりであったが、いつもより強引なジュードの舌先に破れ、唇の中を許してしまう。
仕方がないと、今回は諦めて、咥内をミラは許す。
体力が奪われているくせに、どこからこういう力が出てくるのか、ミラには不思議でならなかった。



「調子に乗るのもいい加減にしろ」

「どっちが。仮にも僕は男で、君は女だよ」

「君は今の体の状態を、わかっていないようだな、助けてやったのは誰だ……っ…」





吸い込まれた唇。
これは本当に最終手段を使うしかなさそうだ、ミラはその時まで、ジュードに付き合おうと思った。














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