アルヴィン 13
レイア 24



※観覧注意








アルヴィンの発言に、レイアは思考が停止しかけた。
セックスを教えてくれ。この発言がどれ程重い意味を持っているのか、この人はわかっているのか。まだ若いから、冗談で、軽いノリで、わたしをからかっている。そうなんだ、と。



「またまた、わたしをからかってるの?その手にはのらないよ」



これ以上、この部屋にいることに危険を感じたレイアは、早々に部屋を立ち去ろうと試みるが、アルヴィンがレイアの腕を掴み、逃がそうとしなかった。
レイアは振り返ることができなかった。彼と顔を合わせてしまっては、アルヴィンから逃れられない。そんな感覚を体全身で感じてしまっているのが恐ろしいと思う。



「俺にこんなことしといて、自分は逃げんのか。ずりいよな、大人は」

「そうだよ、大人は勝手で、我が儘な生き物なの」


喉から声をどうにか搾り取り、レイアはアルヴィンを説得しようとする。
昔から自身の事を、こんなに慕ってくれた彼ならば、きっとわかってくれるはずだ。物分かりもいいし、今はただ、自分のしたことに怒っているだけなんだと。



「俺は子供だから、わかんね。いいから、教えろって言ってんだよ」



アルヴィンの両腕が、レイアを捕らえた。
レイアが家を出る時と同様に、力が込められた抱擁だった。よしよしとできたはずなのに、今はもうできないし、突き飛ばそうと思っても、それは敵わなかった。


「姉貴」


アルヴィンが耳元で囁き、そこから、レイアの神経がぞくりと震えては、顔を真っ赤にする。
変声期を迎える直前の、もう聞くことはなくなるであろう、彼の声を直に聞くのは初めてだったからだ。この声は、どんどん低くなっていくのであろう。きっと、酷く、ずるい声になるんだ。なんとなくだが、想像がつく。


「い、いつ、お母さんが、部屋に入ってくるか、わかんないでしょ、ダメだよ」

「じゃあ、父さんや母さんがいない時なら、いいんだ、今の言葉って、そういうことだろ」

「アル…………ひゃっ」



ぺろっとアルヴィンはレイアの耳を舐めた。
一回ならまだいい。それを数回繰り返された。やめて、お願い、どうにかなっちゃいそうだと、レイアは耐える。



「レイアー!」




下から母親がレイアを呼んでいた。助かったとレイアはアルヴィンの腕を振り切り、部屋を出ていった。
一人取り残されたアルヴィンは、大きな溜息を漏らす。
我慢できなかった。俺を取られるのが嫌だったとか、そんな贅沢なセリフ。にしては、男の性感帯にこういうことをする奴だったんだと、知った時は驚いた。
レイアはセックス経験者だと思ってしまって当然だろう。あの指の動き、事後処理、あんなにテキパキできるものなのか。
自分はさておき、男がいるのは、姉の方ではないのか。

自分だって嫌に決まってる。レイアを他の男に持って行かれるなんて。レイアが自分にこういうことをしたんだから、自分がレイアにそういうことをしても、許されるはずだ。

母親の用件が終わったら、レイアを捕まえてやる。アルヴィンは階段に座り、レイアを待ち伏せした。



「え、お父さんと?」

「そう、約束してたの、忘れちゃってて。だから、行ってくるから、よろしくね」

「わたしも一緒に……」

「何言ってんのよ、夫婦水入らずにたまには過ごさせなさい」

「お、お母さん………」




あと数分後には、母親は出かけてしまうらしい。これはまずいとレイアは焦り、自身も一緒に行きたいと言ったが、母親に断られた。
この誰もいない家の中で、今、アルヴィンと二人きりになるのは危険信号だ。ならば、自分も、どこかに行くと言って、母親と一緒に外に出よう。帰る時間を見計らって、帰ってくればいい。レイアはそうしようとした。



「久々だろ、充分楽しんでくれば」



レイアの背後には、アルヴィンが立っていた。
そして、逃がさないと言わんばかりに、彼は母親に見られないように、レイアの手を握り締める。


「さすが我が息子。じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」

「あと、洗濯やっときゃいいんだろ、姉貴もいるし、パパッと終わらせるよ」

「ありがと。ほらレイア、あんた、アルヴィンを見習いなさい」

「うっ……………」




彼の掌の温もりがあまりにも熱い。熱くて汗ばんできた。それでも彼は離そうとしてくれない。
やがて母親は家を出ていく。
足音が聞こえなくなってから、アルヴィンは再び、レイアを背後から抱きしめた。今度こそ絶対に逃がさない。丁度よく母親も出かけてくれた。ならばもう、自分の心に正直になる外なかった。


「……セックスじゃないからね」



レイアが一言呟いた。



「嫌だ」

「違うもん、今からするのは、セックスじゃない、セックスじゃ、ないんだから」




許されてはいけないひとつの一線。もう逃れられないんだとレイアは悟った。ならば、これから、自身達が行うことは、性行為ではないと思うようにすればいいのだと、都合のよい言い訳を自分にした。
出なければ、家族にも、何より、アルヴィンにも申し訳がたたなくなるから。
そうして彼女はアルヴィンの方を向き、唇を奪う。レイアは彼にしがみついた。
彼にとっては、初めてのキス。ドラマなどで見てはいたが、こういうものなのかと思っていた。またレイアの唇の感触を味わいたいと思い、アルヴィンはレイアに唇を重ねる。

ああ、なんてこんなに柔らかいのだろう。




「姉貴がそう思うなら、それでもいい」

「じゃあ、部屋に行こ」



二人は階段を上り、アルヴィンの部屋へ入っていく。そこから、理性が抑え切れなくなったアルヴィンが、レイアに襲いかかるのに、数秒もかからなかった。
レイアをベッドの上に押し倒し、自身は制服を脱ぎ、上半身裸になる。
そんな彼を、レイアは淡々と眺めていた。もう思考がズレているのであれば、これで彼は、完全にわたしから離れられなくなるんだ、初めてであるわたしを、彼の体中に刻み込むことができる。

わたしを、忘れられなくなる。他の女にいけなくなる。また、醜い感情が、レイアを支配していった。


「触っていいよ」


その声の合図と共に、アルヴィンはレイアの服を脱がして、下着姿にさせる。だが、ブラジャーの外し方がわからなかった為、レイアはくすっと微笑んでは、こうやって外すんだとアルヴィンに教えた。
外された後、あらわになったレイアの胸を見て、彼は興奮を隠せない。


「いいよ、アルヴィン」


そして彼は、レイアの肌に触れ始める。彼の背中をぎゅっと抱きしめては、レイアは、アルヴィンの指使いの気持ち良さに堪え切れず、甘い声を漏らす。

アルヴィンはレイアの綺麗な体や、レイアが気持ち良さそうにしているのを見て、これは夢ではないのかと思っていた。夢では感じきれない人肌の感触が、現実だと教えてくれる。
何言ってんだよ、セックスじゃなきゃ、これは一体何になるんだ。アルヴィンはそう思ったが、これは姉弟である関係性を指したからこそ、彼女はそう言ったんだろう。体を許してくれると思ってはいなかったが。

自身の下でレイアが呻いている。完全に俺の支配下に今いるんだ。体の触れ方等はさっぱりわからなかったのだが、今まで夢にみたことや、レイアにしたかったことをすればいいんだと思っていた。


「初めてじゃないでしょ」


レイアが言う。



「初めてだけど。だから、さっきも言ったろ、俺の年齢わかってんのか」

「だって、もっと、教えてあげなきゃいけないんだと思ってたのに」

「予想外ってか。まあ、充分な褒め言葉だな」



ふわふわと別の時限に飛んでいく。こんなのは初めてだった。上手く言うことはできないが、愛を感じるとでも言うべきか。
秘部に触れる時もそうだ。もっと苦戦すると思っていたのに、自分の方が余裕がなくなり、彼に翻弄されていく。どうして、わたしの敏感な部分がわかるの。視界が真っ白に染まっていく。いってしまう。


「いれたい」

「ゴム持ってるの?」

「あるよ」

「嘘、持ってるんだ……。なかったら、ここで止めるつもりだったのに」

「悪いな、用意周到なんだよ、俺は」




信じられないという顔をしながら、レイアはアルヴィンを見つめた。



「泣いても知らないからな、俺、初めてだから、加減の仕方、わかんないし」



ぐっと急に押し込まれ、レイアは声にならない声を上げてしまう。
ピストンが激しい。腰の動きも止まらない。速度は早まるばかりで、息ができなくなりそうだった。



「やっ、あぁっ……」



知らない、こんなの、知らない。
レイアは泣き叫んだ。余りにも快楽が強すぎる。ゆっくりではないからだ。



「いい顔だな」

「あっ、ああぁっ……!!」

「最初に言ったからな、泣き叫んでも知らないって」




わたしを刻み込んであげようって、そう思っていたのに。





「気持ちいいよぉ……っ」



ついつい出てしまう、その言葉。攻め側としては、満足な言葉だった。
どうだ、レイアへの愛情はこんなもんじゃない、もっともっと教えてやるから、その代わりに、レイアが俺を好きになってくれる方法を教えて。




行為もそうだったが、それよりも、彼は、そっちの方を知りたかった。

一生叶わないと、わかっていても。


















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