いまだに天使なあいつの事情(アルレイ)
つくづく俺は、こいつには弱いらしい。
すべての事件の発端は、ヘリオボーグから始まった。
久しぶりに訪れたこの場所も、やっぱ大分変わっちまったなと思った。
変わったのは場所だけではなかったな。久しぶりに会った幼なじみのバランも、なんだかんだで元気にやっていては、源霊匣の開発なんか始めちゃったりしちゃって。
こう前に進んでんのを見ては、ちょっと焦るし急かされる。
まあ、俺も俺で、なんとか新しい仕事も見つけられそうだし、その報告も兼ねて、バランに会いに、ヘリオボーグ研究所に足を運んだ。
「あれ、アルヴィン」
その聞き覚えのある声を耳にしては、俺はびっくりしてごほんごほんと咳払いをする。
「レイア・・・おたく、なんでここに」
「ちょっとジュードに用事があって来たんだけど、いなかったみたいで」
「お、ちょうどいいなアルフレド、俺も外に出なきゃいけない用事があったんだ。留守、任せてもいいか?」
「はあ!?」
おいおいマジかよ正気か?
そりゃあバランは、俺らに起こった事情を知らないから、なんとも言いようがねえけど、俺は構わないが、レイアは、俺と一緒にいたくなんかないだろ。
「バランさん、ごめんなさい、なんか、わたし・・・」
「いやいいんだよ、元々、アルフレドがここに来るのわかってたことだし」
「そうだったんだ。じゃあわたし、アルヴィンと一緒にお留守番してます」
「・・・・・・!」
レイア、本気か?
俺と二人になって、怖くないのか?
だけど、そんなことは聞けず、俺は嫌そうな顔をしつつ、わかったよと言って承諾した。
まあ多分、ジュードが早いうちに戻ってくるだろうって、そしたら大丈夫だって、そう思っているんだろう。俺の完全な思い込みではあるが、マイナス面に捉えるのは、俺の得意技。
レイアが手を振りながらバランを見送って、俺達は二人きりになった。
「そういえばアルヴィン、喉乾いてない?」
「いや、俺は・・・大丈夫だ」
「そう?わかった」
レイアはにっこりと微笑んで、テーブルに置いてあるポットから飲み物を注ぎ、飲んでいた。
さてここからが本題だ。レイアと何を話そうか。ここにきた理由も聞いたし、あと会話の話題的には、近況報告を聞くのが筋だろうか。
彼女からの手紙を読んだのに、返信を返していない分、やっちまったと後悔ばかりが募る。
「なあ、レイア」
「うん、なーに?」
レイアが振り向いた瞬間、俺は空いた口が塞がらなくなった。
目の前のレイアが、明らかに小さい。エリーゼと同じくらいにだ。なんだ、何がいったいどうしてこうなった?
「お前・・・なんだよ、どうしたんだ?」
「え、何どういうこと」
「っ、あーもう!!!」
急いで俺はコートを脱ぎ、服が多少はだけているレイアに羽織らせる。
そして自身が確認できるガラス張りの所にレイアを連れていき、彼女の姿を確認させた。
「え、ちょっ、何これ!?どゆこと!?」
「俺が聞きてえよ、ったく、大方、その飲み物に原因がありそうだな」
恐らくバランが、どっからか仕入れてきたのを、間違えてレイアに出しちまったんだろう。
急いでバランに連絡をとってみたものの、手が離せねえのか、電話に出る様子がない。
「ど、どうしよう・・・」
明らかにレイアは心配を募らせている。そりゃそうだ、いきなり小さくなって、いつ元に戻るかわからない、こんな状況で。
俺はレイアの少し小さくなった頭をぽんぽんと撫でて、呟く。
「大丈夫だからな」
と。レイアは何も言わず、こくんと頷いた。
後々バランと連絡が繋がり、事情を説明したら、やはり間違えて出してしまったとのことだった。知り合いからの試作品だったらしく、試作品だから早い時間には元に戻るだろうとのこと。だがそれは、いつになるかはわからない。
「アルヴィン、わたし、帰る。ジュードに心配かけたくないし」
「帰るってお前、そんな状態で帰れるわけねえだろ」
「でも、じゃあ、どうしたら・・・」
「おたくさえよければ、の話になるけど」
俺はレイアに膝まずき、王子がお姫様にするような格好でレイアに手を差し伸べる。
「俺んとこ、こいよ」
本当は心知れたジュードと一緒にいた方が、レイアも安心かもしれない。
けど、ジュードに心配をかけたくないと言っているのなら、俺で大丈夫なら。
こんなクサイ台詞、格好、レイアは引いたかもしれないが。
「・・・・・・・・・」
少し間が空いたが、レイアは、ゆっくりゆっくり手を伸ばし、俺の手を取ってくれた。
そして俺はくしゃくしゃとレイアの頭を撫でて、大丈夫だからとまた呟いた。
とりあえずバランに今のレイアに合うサイズの服を買ってこさせる。
ジュードが電車に乗り遅れたから遅くなると連絡が入った同時に、レイアは急用が入ったから帰ると連絡を返し、俺らはバランが戻ってきてから、ヘリオボーグを後にした。
俺は震えているレイアを少しでも安心させようと、彼女の手を握り締め、その手を離さなかった。
「どうした、レイア?」
繋がれた手に時々重さを感じて、俺はレイアの方を見る。
「やだな、なんか、眠くなってきちゃった」
「大分歩いたし、色々あったし、疲れたんだろ」
そりゃあ、気を張っていたんだ、無理もない。
俺はしゃがみ、レイアをおんぶしようとした。
「や、やだ、大丈夫だよ、わたし重いし」
「重いわけねえだろ、そんな小さい体で」
「どうせ元の体は重いですよーだ」
「そんなこと言ってねーだろ、俺にとっては、どっちも変わらねえ、軽いんだよ。いいから、こういう時は黙って甘えてりゃいいんだって。ん。」
「・・・・・・ありがとう、アルヴィン」
本当、更に軽くなっちまったな。
あの時も、俺が運んだんだ。それくらいさせてもらわないと、いやそれ以上も。
少ししたら、レイアの寝息が聞こえてきた。
「寝てるのは、安心してる証拠でもあるんだよな」
この小さな重みが、俺は嬉しかったんだ。
家に着き、俺はレイアを背中から下ろし、ベッドへと寝かせた。
まだ起きる気配は見られない。すやすやと眠っている。
「可愛い顔してくれちゃって」
レイアの顔を見ては、俺はぷにぷにとした頬をつついてみたり、髪を撫でてみたり、少し小さくなったレイアをじっと観察していた。
「俺がいるからな、レイア。俺が傍にいるから」
少し疲れた。俺も一緒に寝よう。
そう思って、レイアの背後に周りこみ、レイアを軽く抱き締めた状態で、俺は重くなっていた瞼を閉じた。
数時間後。
目を開けたら、そこは見慣れない部屋だった。
「あれ、わたし・・・・・・?」
どうしてたんだっけ。ああ、そうだ、バランさんが飲み物を間違えて、小さくなって、それで・・・・・・
ムクッと起き上がろうとしたけど、起き上がれなかった。何かが、わたしの体に乗っかっているから。そう、腕が。
横を見ると、アルヴィンが眠っていて、わたしは声にならない声をあげた。
わたしの体をしっかりと、抱き締めて、離さなくて。傍にいてくれてたんだ。
本当、綺麗な顔してる。可愛い寝顔してる。
「ありがとうアルヴィン」
アルヴィンと一緒なら大丈夫だって思ったから、わたしはアルヴィンの手をとったんだよ。
手を差し伸べてくれたアルヴィンは、王子様に見えた。あなたにおぶられていた時もわたしは、その背中がとても心地よかったんだよ。
わたしは少し身を乗り出して、アルヴィンの頬にキスをした。感謝の気持ちを込めて。
「せっかくだから、もう少しアルヴィンと一緒にいたいな、だから、神様、あともう少しだけ・・・・」
もう少しだけ、このままで。
―――――――――――――――
アルレイでレイアが幼女化しちゃうお話(葵うさ子様)
タイトル・反転コンタクト
葵様、お久しぶりです。かなり遅れてしまいましてすみません。葵様のアルレイに、私もいつも萌えをいただいております。
リクエストですが、少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。今回はリクエストありがとうございました。
2013.2.17
← t
op
→