君へ贈る溜め息(ジュミラ)
机の上に広げられたおつまみ、麦酒やお酒の缶、ハ・ミルで収穫された果実で作られたワイン。
そのテーブルを囲み、盛り上がる大人達を背に、一人、フライパンを動かしているジュードの姿。
もう既に、何度も何度も目にしてきた光景なのも加え、酔っているアルヴィンに絡まれるのが非常に面倒臭かった為、ジュードは軽いおつまみを作ると言い残し、その場から逃げるように立ち去った。
お酒を楽しく飲むには、とアルヴィンに語られた事があったが、アルヴィンが言ったような光景を目にした事など一度もない。
グラスを片手に乾杯をし、少しずつ舌を動かして、お酒の風味を感じながら、こくっと飲んでを繰り返して。
(………僕は、絶対、あんな風にはなりたくない……)
そうジュードは心に決めてはいたものの、実際にその状況の中で、凄く楽しそうに笑っているミラを見ていると、その隣に行きたいなと思ったりした事も少なくはない。
すぐに顔を赤くして、潰れてしまうのも早い、そして記憶を失っている時すらあるというのに、ミラはお酒を口に運んでいる。
しかもその時のミラが、生き生きとして、吹っ切れて、普段とは違う姿を見せるから、その彼女に構われたい、そう思っていた。
でもいつも、彼女の隣にいるのはアルヴィンだった。
いつ彼が、お酒を言い訳にして、ミラに手を出すのかわからない。
自身も傍にいて見張っていたいと思うのだが、その中に入るのは控えたい。もし飲まされて、意識を失うとか、そんなことになってしまっては、洒落にならない。
(本当は、すぐにでも、アルヴィンと位置を変わって貰いたいんだけどね)
平常心を保ってはいるが、アルヴィンとミラがお酒を飲み始める度に、顔こそ笑ってはいるものの、後ろで腕を組んでは、拳をぎりぎりと握りしめているジュード。
言葉にできない分、拳に当たる。あまり良くないことだ。自分でもわかっている。
(……さて、持っていこう)
二人から好評を得ているおつまみの焼き枝豆を作り終えたジュードは、胸をトントンと叩いて落ち着かせてから、二人の元に向かった。
見ればアルヴィンが既に机に寝そべっており、ミラがアルヴィンの肩を揺さぶり、起きろ起きろと連呼している。
その言い方がまた堪らなかった。声のトーンが上がっていて可愛いのだ。
これをいつもアルヴィンが聞いているのかと思うと、羨ましくもあり、ずるいとも思い、彼の耳を塞いでやりたくなる。
現に今、その彼は起きる気配を見せない。それならば。
「ミラ」
アルヴィンの肩に触れているミラの手首をジュードは掴む。
簡単に捕まえられた。力が入っていないのがまるわかりだ。
「ジュード!」
彼の姿を見てミラの顔はぱあっと明るくなり、ジュードの胸へ飛び込んでいくミラ。
ごろごろと猫のように甘えた。これをアルヴィンへとしているところを見たわけではないが、初めてお酒の席に居合わせた時、ミラにそうされ、アルヴィンがにやにやしながら、何か言いたそうにしているのを見てから、同席しなくなったというのも、もうひとつの理由だった。
自分とミラがこうしているのを見られても構わないとは思うが、この自分に甘える可愛い姿の彼女を、他の誰かに見られるなんて、嫌に決まってる。
自分だけの、ミラだ。
彼が先に眠って、ミラが起きている。こうなる時をジュードはずっと待っていた。
「はいはい。どうしたの?」
「なんでアルヴィンが眠っているんだ、いつもはまだ起きてるのに」
「うーん、どうしてだろうね?」
「まったくだ、こいつはまだまだ、根性が足りない」
「ねえ、ミラ。もうアルヴィンの名前は、呼ばないで。僕は眠らないから、僕がミラの相手をするから。ね?」
ミラが飲みかけていたお酒のグラスに手をかけたジュードは、くいっと口に含ませると、そのまま飲み込まずに、ミラの口の中へ含ませる。
こくん、と飲み込んだミラはジュードをじっと見つめている。
「おお、これはお酒じゃないか。そうか、ジュードも飲めるようになったのか」
「飲めないわけじゃないよ、ただ、僕には僕の、別の楽しみ方があるんだ、ミラ」
ミラの背中に回していたジュードの両手が、ミラの脇腹を擽る。
その部分を何度も繰り返すから、ミラはふうふうと呼吸を苦しそうに繰り返す。本当にもう力は入らなくなった。声から感じているのもよくわかるから。
お酒を飲んでも潰されなければ、その後に楽しいことが待っているよ。
ねえ、ミラ?
それはミラが、1番よくわかっているよね?
ジュードの囁いた言葉が、ミラの中でループする。
溜め息に似た吐息と共に。
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ジュミラ前提で、アルヴィンとミラが酒で盛り上がっているのをみて、ジュードがやきもちする話(できれば裏)(匿名様)
タイトル・反転コンタクト
今回はリクエストありがとうございました!
遅くなりまして、そして裏ではなくて申し訳ありません。
応援ありがとうございます。これからも頑張りたいと思います。
拙い文ですが楽しんでいただけると嬉しいです。
2012.10.29
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