Commemoration | ナノ


君なら何て言って笑うのかな(アルレイ)











その日、珍しく、雪が降り注いだ。
宿泊邸ロランドにて、客室を掃除していたレイアは、窓の外から降り注いでいる、白い物に気がつき、窓を開けた。


「雪……!どおりで寒いと思ったら……」


今日はクリスマスで、それに似合う雪もタイミングよく降ってきて、これは街も人々も、きっと賑わうんだろうなと、レイアは思っていた。

もちろん、レイアにとって、この日は楽しみにしていたイベントの一つに変わりはないが、イベントがあるということは、お店も忙しくなるということ。人手も足りなくなるかもしれない為、自分から率先して、店の手伝いをするようにしていた。

それは昔から、無意識に行っていた事だったから、特に気に留めたりなどはしなかった。お客様も、両親も一緒にいるし、賑やかで楽しい空気に包まれて、みんなと一緒にいれるし、楽しかったから。

けれど、今年は違った。
一緒に過ごしたいと、レイアに告げてきた人物がいた。それは想い人である彼、アルヴィン。
女性はイベント事が好きだからと考えていた彼は、レイアもそうだと思い、クリスマスを共に過ごせるように、仕事を片付けていた。
だが、クリスマスの一週間前に、話を持ち掛けようとした所、レイアから、毎年クリスマスは、家の手伝いをしなければならないんだと告げられた。
レイア自身も、アルヴィンがこの時期に忙しい事は理解していたから、気にしなくて大丈夫だからね、と伝えたのだ。
本当は少しでもいいから、会いたいとは思っていたけれど。
アルヴィンは、わかったと言い、そのままクリスマスを迎える形になってしまった。




周りを見渡すと、雪にはしゃいでいる子供の姿が目に入った。買い物をしている人もたくさんいた。
そんな多数の人混みの中から、レイアは見覚えのある人を見つけて、何度も何度も目を擦った。


「え………」



そう、それはアルヴィンだった。
あの黒いスカーフ、あのコート、わたしが彼を間違えるはずがない。
逸る気持ちを抑え切れず、レイアは掃除中の部屋を抜け出して、アルヴィンの元へと走った。
だが、人が彼女の行く手を阻んだ。彼は長身だから、彼の姿はすぐに見つけられた。けれど中々辿り着く事ができない。


「っ……アルヴィン………」



その背中を捕まえたい。わたしはここにいるんだと叫びたい。見つけてほしいだなんて、そんな虫のいいこと、思わない。



「あ……」



やがてレイアは足を止めて、それ以上追いかけるのを止めてしまった。
彼だって仕事中だ。ここにいるのだって、仕事で来ているのかもしれない。自分が邪魔するわけにはいかないと思った。
そう、ただ、彼の姿を見れただけで、それだけでいいやと思おうと思っていた。

その時、ふわっとレイアの体に何かがかけられた。自分の体は、雪で濡れて寒いはずなのに、その寒さが少し和らぐ。
そして、彼女は手を引かれて、列から抜け出した。レイアには何が起こったのか、頭がパニック状態になった。



「……ったく、そんな薄着で何してんだよ、レイア」

「え、あ、アルヴィン!?」



レイアは勿論、開いた口が塞がらなくなった。
先ほどまで追いかけていたはずの彼が、こうして目の前にいるのだから。
レイアは、アルヴィンの黒いスカーフに巻かれていた。これはアルヴィンにとって高級品でお気に入りの物のはずなのだが、自分が包まっていて大丈夫なのだろうか。

レイアが言いたい事を悟ったアルヴィンは、ぽんっとレイアの頭を撫でる。


「風邪でも引かれたら困るだろ」

「ありがと……でも、なんでここに…」

「仕事…と言いたいとこだが、やっぱ顔が見たくってさ。ちょっと時間ができたから、宿屋付近をうろうろしてた。けど、邪魔しちゃ悪いよなーとか思っちまって……」



そんな彼の言葉を聞き、胸がきゅんとなったレイアは、アルヴィンへと抱き着く。




「レイア、苦しい……」

「だって、嬉しいんだもん」

「……あーもう、こうして会えたんだ、5分だけでいいから、一緒にいてくれないか、レイア」



レイアを抱きしめ返したアルヴィンは、顔を見られないように、レイアにお願いをした。
それに対し、レイアは、こくっと頷き、また彼に絡み付いた。

二人は街の中央にある、クリスマスツリーを一緒に眺めた。
レイアがなるべく濡れないよう、自身のコートの中に、レイアを隠すように、そこにいさせた。レイアは照れていたが、アルヴィンと密着出来ていることが嬉しく、これでいいと思っていた。



「しっかし、会えてよかったよ」

「え?」

「恋人と過ごすクリスマス。こういうの、やっぱ特別だろ」

「…うん、そうだね、わたし、初めてだったから、やっぱり、こういう日に、アルヴィンと一緒にいれるの、とっても幸せだなって思っちゃった」



そう言って、キラキラと光るイルミネーションを、レイアは見る。





「……俺もだよ」





アルヴィンは再びレイアを抱きしめる。
彼のシャツを、レイアは掴んだ。もう少し、このままでいられたらいいのに。

時間を惜しいと思うクリスマスは、互いに生まれて初めてだった。











―――――――――――
アルレイで甘々クリスマス(匿名様)
タイトル・反転コンタクト


遅くなりまして、申し訳ございません。
今回はありがとうございました!拙い文ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。



2012.7.16


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