アフェクション(ジュミラ)
古典の授業中に、ジュードの携帯のバイブが鳴った。静まり返っている教室の中、こういうバイブの音はすぐに周りは気づき、担当教師は、授業中はバイブを切っておけと、血相な顔をしながら、生徒達を睨みつける。
ジュードは、周りの皆に僕のせいだ、ごめんと心の中で平謝りをする。
バイブ設定にしていた自分のせいであったが、授業中にメールを送ってくるのは誰だと、先生の目を盗んでは、こっそり携帯をチェックした。
『暇だな』
この一言メールの差出人は、ミラ。
ジュードは自身の隣の席にいるミラへと視線を動かす。
見ればミラは、両手を合わせて、すまないと口パクで返す。ふう、とジュードは息をつき、ミラから視線を反らした。
ジュードとミラは恋人同士である。隣同士になってからというもの、教科書を忘れたから見せてくれと言われ、机をくっつけと見たり、ジュードのお弁当のおかずを盗み、味に惚れ込んだミラが、お昼になると、一緒にお弁当を食べるようになったり、学級委員であるジュードが、放課後に残っていると、部活上がりのミラが来て、ジュードの手伝いをしたりなど、何かと、二人で過ごす日々が増えた。
ミラの接近に、最初は拒絶したジュードだったが、いつしか、ミラと過ごすのが当たり前となってきたのが、少しばかり怖かった。
近すぎた為に、距離を置こうとした。必要最小限の関わりだけにしようとしているのに、彼女がそれを許してくれない。
「君が好きだから、私は君と一緒にいたいんだ」
結果、彼は、ミラに落とされてしまい、同時に、距離を置きたいと思ってしまうほど、ミラを好いている事を知った。
ミラの行動には、ハラハラさせられることが多いのも、また事実だ。先程のメールもだ。心臓が止まってしまうかと思った。しかも一言だけ。それがまた、ミラらしいが。
『別にいつでも話せるんだから、メールなんかしなくても。暇だから付き合えってこと?』
『あながち嘘ではない』
『僕は、ミラのおもちゃじゃないよ』
『誰もそんなこと言ってないだろう。私がジュードと、話したかったからメールしたんだ。おかしい話だろ、毎日あんなに言葉を交わしているというのに、授業中でさえも、君と話したいと思ってしまうんだから』
本当にこの人はストレートな言葉をぶつけてくる。計算などではなく、素でこういうことを言ってくるから、勘弁してほしいとジュードは思う。
そんなこと思いながらも、本当は嬉しくて仕方ないというのだが。
『今日、部活だよね。終わるまで待っててもいい?』
『ああ、今日はすぐに終わると思うぞ』
『わかった、終わったら連絡して』
メールのやりとりは、そこで終了する。
ジュードのメールの受信歴は、半分がミラからのものだった。たまに見返したりもしてしまう。
自身はマメな方だが、ミラはそうではない。だから、彼女から来るメールは、特別に近かった。
不思議だった。付き合う前からも、一日一回は必ず、ミラからメールが来た。一言だけであったが、いつしかそれが楽しみになっていた。他の人ではこんな気持ちにはなれない。ミラだからこそ、だった。
『終わった』
ミラのメールの受信と共に、ジュードは足を動かして、部室へと向かう。
ノックをし、ドアを開けた。そこには既にミラしかいなかった。他の人は帰ったのかと問うと、帰ったぞとミラは言った。
ジュードは部室の内鍵を閉め、眼鏡を外す。
テーブルの上に腰を落としているミラへ近寄っては、そこから引きずり落とし、抱きしめた。
「ジュード、私は今汗くさいぞ」
「そんなの気にしないよ」
この温かい体の感触。ずっと触れていたかった。この人は自分の彼女だ。こういうことを許してくれるし、彼女もそれに応えてくれる。
学生だから、許される行動には限りがある。生真面目な彼は、それを懸命に守り続けては、抑制する。
本当は、この服の下の肌に触れたくて触れたくて、堪らないというのに。
「ジュード」
けれどそんな思いは通じず、ミラは、ジュードの頬にキスをする。そして今度は反対に。そうしてまた、ジュードの肩に寄り掛かる。
一番大事な所にはキスをしてくれないのかと、ジュードを焦らす。
「いじわる」
ミラを少し突き放し、ジュードはミラの顔を持ち上げてキスをした。
先に口を開けてくるのは、ミラの方だ。ソフトクリームを舐めるように、互いの舌を絡ませあって。
「スケベだな」
「一応、僕だって男だし。ミラこそ」
「好きな人と触れ合いたいと思って、何が悪いんだ」
そう真顔で言われてしまっては、次にかける言葉は見つからない。それならば、態度で答えるしかないのかと、彼はまた、ミラの唇を塞いでしまった。
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ジュミラで学園。同じクラスで恋人同士。甘々が甘裏(匿名様)
今回はリクエストありがとうございました!
拙い文ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
2012.1.19
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