It becomes sweet soon(アルレイ)
成人を迎えた時、自分はどんな風になっているんだろうって思っていた。
きっともっと、大人っぽくなって、ミラみたいなバリボーみたいになって、かっこいい女性になっているんだろうなって、自分の姿を想像しながら、その時を待っていた。
反面、大人になれば、いろんな責任が付き纏う。自分はしっかりとした人間になれているだろうか。不安も同時に募らせた。
理想をアルヴィンに語ったら、すごく大笑いされた。バカにされたような気がして悔しくて、頬を少しばかり膨らませた。
「実際、そんなに変わんねえって」
悪い悪いと謝りながら、アルヴィンはレイアの頭をぽんぽんと叩く。
それでもレイアは納得したような様子を見せることはなかった。きっと今は十代だから、彼は自分にこうして、頭を撫でたり、ぽんぽんってされたりするけれど、自分が成人して大人になったら、そういう扱いをされなくてすむんだ、大人の女性として対応してくれるに違いない。
それをレイアは楽しみに待っていた。
そうして、とうとう迎えた成人を迎える歳。
鏡を見つめたレイアは、あの時に聞いたアルヴィンの言葉を思い返しては肩を落とした。
雰囲気こそ大人っぽくなってはいたものの、実際迎えてみれば、バリボーになっているわけでもないし、心はあの頃のままだった。
よく永遠の何歳という事を言う人がいたが、なるほど、そういうことかと納得もしてしまった。
今日はアルヴィンが成人祝いとして、ちゃんとしたレストランに連れて行ってくれるらしい。お酒を呑める年齢となった為、お祝いしてやるよとの事で、レイアは浮かれた。
何を着て行こうか悩んでいたレイアに、アルヴィンはレイアに大人記念として、レイアに服をプレゼントした。普段では着たことがなかった、シルクのワンピース。見た感じで高そうな物なのに、こんな高価な物を貰ってしまっていいのか、レイアはちらっとアルヴィンを見る。
「いいから、おたくは何も気にすんな。値段なんか聞くなよ、俺がレイアに似合うと思って買ったんだから、おたくは黙って受け取りゃいいんだよ」
彼が自分に似合うと思って買ってくれた服を、シワにならないように、破れないように、ゆっくりと身につけたレイアは、再び鏡を見つめる。
「なんか、自分じゃないみたい……」
その鏡に映っている人物は、まるで自分ではないみたいだった。レイアが想像した、大人の女性が身につける服だった。
自分がまだ、成人になった実感を感じないのに、こういう姿を見ると、こういう服を身につけてもおかしくない年齢になったんだなと思っていた。
長くなった髪の毛も少し巻いてみて、慣れないヒールも履いて、レイアは約束の場所へと向かう。
「ほらな、やっぱり似合う。俺って天才だな」
レイアと合流したアルヴィンは、がらりと雰囲気が変わったレイア、そして、自身が選んだ服を身につけてくれたレイアを見て、自分を褒めちぎった。
「でもやっぱり、着慣れないよ、ヒールだって慣れなくて」
「仕方ねえな、ほら」
アルヴィンは肘を曲げて、ここに捕まれよとレイアを誘う。
「ありがとう」
「俺って紳士だからさ」
「まあ、そういうことにしとくね」
アルヴィンはきっと、自分のこの服に合わせてきてくれたんだろうなと思った。
前に俺は何を着ても似合うと言ってはいたが、本当にその通りだ。しかも三十路を過ぎた彼は、更にかっこよくなった気がする。大人の色気も出ている。なんてずるいんだろう。またドキドキしてしまう。
アルヴィンにエスコートされ、レイアはレストランの予約席に着席する。
またここも凄い所だ。ガチガチに緊張して体が固くなっていく。
ウェイターがグラスにシャンパンを注ぎ、後を去った。これは確実にお酒だ。初めて体験する事ばかりで、頭が混乱しそうだ。
「レイア」
「は、はいっ」
「成人おめでとう、乾杯」
グラスが重なった時、レイアの心臓も何かが弾けていた。
初めて口にしたお酒は、少し苦いものであったが、嫌いではない。これが大人になった者が呑むことができる物なんだ。
「堅苦しくて悪いとは思ったんだけど、こういう場所に連れてってさ、おたくに体験してもらおうって思ったんだ」
「もう、なんだかんだ言ってさ、アルヴィン、いろいろ考えてくれてたんだね」
「当たり前だろ、俺だってもう、いい歳してんだから」
「正直、緊張してるけど、凄く嬉しいよ、ありがとね」
自分はまだまだ、成人に成り立てのひよっこだ。
成人になれたからと言って、大人に成り切れていないのも知っていた。
これからが、頑張らなければならないことばかりなんだ。
成人したお祝いとして呑んだお酒が美味しくて、いろんなものを口にしてみた。時々アルヴィンが心配していたが、好奇心というやつで、たくさん頼んでは呑んでしまい、食事がすべて終わる頃には、レイアは眠くなってきてしまっていて。
「大方予想通りだな」
アルヴィンはレイアを起こし、再び自身の腕に掴ませた。レイアはふらふらとしていたので、アルヴィンの腕を掴まなければまずいと思い、しがみついていた。
「レイア」
アルヴィンはポケットから鍵を取り出し、レイアの顔の前でぶらぶらと揺らしながら、それを見せた。
「かぎ……?」
「こうなると思ってたから、この上のホテルに部屋をとってんだ」
「え」
「こんなフラフラじゃあ、帰れないだろ、お嬢さん」
次のお祝いをしてやる、まだまだフラフラになるのは早いと、アルヴィンはレイアの顎を持ち上げて唇を落とす。軽くと思っていたが、アルヴィンの舌が押し込まれ、レイアは立っていられなくなり、慣れないヒールで足を滑らせ、彼に再びしがみついた。
「な?」
この彼の微笑みが許せない。
彼にとっては、私はまだ幼いままなのか、なんとなくそんな気がしたけれど、今はもうアルヴィンに体を預けるしかなかった。
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アルレイでお酒の飲める年齢(成人)になったレイアを二人でお酒を飲みながらお祝いする、最後ちょっとだけ大人っぽい感じのお話(stila様)
こんにちは、いつもお世話になっております。
リクエストもありがとうございます(*^.^*)
このような感じで大丈夫でしょうか??(ドキドキ)
これからもアルレイ好きとして、仲良くできたらと思ってます、こちらこそよろしくお願いします。
今回はリクエストありがとうございました!拙い文ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
2012.1.1
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