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 feel






誰かを想えば思うほど、すべてを独占したい気持ちがないことなど、生まれないはずがない。





僕は、ミラのどこが好きなんだと言われたら、きっと答えることができないと思った。

好きになるのに、理由なんかいらないって言うよね。

最初は信じることができなかったけど、でも、その言葉は、そうなんだって。


自分に大まかな理由がないにしても、ミラがどうして、自分の事を好きになってくれたのかどうか、その理由を知りたくなるのは、やはりずるいことなんだろうか。

なんとなくだけど、ミラに聞き出すことはできなかったんだ。

何かしら理由がないと、ダメなのかと言われそうで。
逆にミラは、僕には一切、そういうことを聞いてきたりはしなかったから。



でもある時、偶然だけど、僕はミラとレイアが会話しているのを耳にしてしまった。
別に隠れる必要がなかったんだけど、レイアが、僕の名前を会話で出してきたから。
その場を離れずにいられなくなった。



「ねえ、ジュードのどういうとこが、ミラは好きになったの?」



レイア、まるで僕がそこにいるのをわかっているような質問をして。
ミラにそういう質問しないでよって、焦ったが、聞きたかった。

ずっと知りたいと思っていたことだったから。




「理由か、考えたこともなかったな」




ミラの返答は、僕が予想していた通りのものだった。
やっぱりそうだよね、理由なんか、いらないよね。



「あ」

「なになに?」

「そうだな、ジュードの傍にいると、居心地がいいんだ。なんというか……私が、私らしくいられるから……かな」

「そうなんだ、わかるかも」





僕は、きっと、体全身が、真っ赤になっているんだと思った。
左手で口を覆い隠して、襲ってくる恥ずかしさに耐えた。

そんな、贅沢な言葉。

嬉しい気持ちも、
切ない気持ちも、
楽しい気持ちも、

こんなに、誰かを想い、どうしていいかわからなくなる気持ちも、


君と出逢って初めて知った。



僕はダッシュで、その場を離れた。思い切り走った。ミラの言葉が脳裏で永遠とループする。


嬉しい、嬉しかった。


本当は理由だって、たくさんあった、だけど僕は。

君を尊敬していて、
そんな君に尊敬される人間でなりたかった。

僕はまだ大人ではないし、君が頼るには、そんな器は持ち合わせていないのかもしれない、それでも。


自信なんて、これっぽっちもなかったけど。





「ははは、なんだ、僕は……」


君の言葉ひとつだけで、こんなにも幸せになれる。






その後の僕は、どうやら態度に嬉しさが、溢れかえっていたようで。


「何かいいことでも、あったのか」


とミラに聞かれてしまった。
なんでもないよって、言おうとしたんだけれど、言う前に、僕の体が、先に動いていて。

気づいた時に、僕の指は、ミラの肩付近に手を伸ばしていたんだ。


「どうかしたのか」


ミラの声に僕は我に返って、伸ばしていた手に気づき、行き場をなくした。


「どうしたい?」

「?」

「その手だよ、そこから、どうするつもりなんだ?」



ミラって、たまに意地悪なことを言うよね。
確かに僕の手は、固まったまま動かなくて、宙ぶらりんの状態で。
戻してしまえばいいものの、きっと僕は、ミラに触れたくてたまらないんだ。
だから手も下げることができないんだ。


僕の手は、ミラの頬に行き先を変えた。
ミラは、触れた僕の手に何も言わなかった。



「早く大人になりたい」



僕はこんなことを口走った。



「どうしてだ」

「君に、尊敬される人間になりたいんだ」

「大人にならなくても、そうなることはできるだろう」



今度はミラが、僕の頬に手を伸ばしてくる。
頬を撫でられ、髪に指を絡ませて、また頬に戻す。



「確かに、君が歳を重ねた姿を見るのは、私は楽しみだよ。なんせ、私が惚れた男だ。きっといい歳の重ね方をするだろう」



ぐいっと僕はミラに引き寄せられ、僕の首にミラの両手が絡み、指は僕の髪をいじっている。
だから僕も、彼女の誘いにのろうと思った。



「それ、僕の成長を、ずっと傍で見てくれているって、思っちゃっていいの?」

「ああ、そうだ。私は君の傍にいる、君の隣は、私のものだよ、誰にも譲らない」







初めてあった時からわかっていた。

僕は生涯、この人がいい。この人だけでいい。

世界中にたくさんの人がいようとも、僕には、この人しかいないんだ。









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