◎ EDEN
君といれば、どこでも楽園だった。
シングルベッドに二人で眠るのは、やはり狭い。
狭い分、密着度は高くなる。
お互いに落ちないように、気をつけなくてはならないから。
アルヴィンの身体が大きい分、レイアの身体が、とても小さく見えた。
元々彼女は、小柄で細い体をしていた。
母親に鍛えられてきた分、腕や腰の筋肉がまた、いい形を作っている。
そのような身体を持っていても、大の男のアルヴィンの力には敵わない。
彼女ひとりを思い通りにするのなんて、簡単だった。
ちょっと力を入れてしまえば、彼女の動きすら、あっという間に止められる。
正面から抱きしめるのも好きだが、レイアを背後から抱きしめるのが、アルヴィンは好きだった。
自分の顔を見られなくてすむからだ。
レイアがどんな表情をしているのか、勿論見たいと思う時もあるが、自分が幸せだと思う顔を、見られたくない。
ごろんとレイアが寝返りを打ち、正面を向き合った。
その時、彼女は重い瞼を開けた。
レイアの顔をガン見していたアルヴィンは、視線の行き場をなくしてしまう。
「顔、見れた」
レイアがもそもそと動き、アルヴィンと鼻をこすり合わせる。
心臓の鼓動が早まった。このままでは、また、手を出してしまいそうだ。
昨晩、あんなに、体を重ね合わせたというのに。
「何すんだよ」
「イチャイチャしたら、ダメかな」
なんてずるい女だ。
そう言われて、断れるはずがないだろう。
「おたくは、俺の調子を崩すのが得意らしいな」
アルヴィンは起き上がり、体の向きを変えて、レイアの額に唇を落とした。
その隙を、レイアは見逃さなかった。
「優しい表情だね」
頬を隠せない程の小さな手で、アルヴィンの頬を撫でる。
一度綻んだ顔は、簡単には戻らなかった。
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