拍手 | ナノ
 複雑な心境



それはひとつのプレゼントから始まった。


最近、エリーゼがにこにこする時が増えた。
戦闘後に、常に自身の武器である杖を気にするようになっていた。



「どうしたんだ、エリーゼ?」

「あ、ミラ」



さすがにミラも疑問に思って、エリーゼの顔を覗き込んだ。


「これ、見てください」



エリーゼはミラに何かを見せる。
エリーゼの杖には、彼女のお気に入りである、ブウサギのキーホルダーが付いていた。


「これは、ブウサギの」

「はい!ジュードが、くれたんですよ」

「ふむ、ジュードが…」



ぱあっとエリーゼの顔が明るくなって、ミラはエリーゼの頭を撫でた。


「これは友達の証というものか?」

「あ、そうですね、友達の証です!」

「……ジュードの奴……私には何も…」



自分はガラスのペンダントを、自分なりの証として、彼に手渡したというのに、
何故だろう、何か気に喰わない。

もちろんそれは、エリーゼのせいなどではない。



「ミラ、どうかしましたか?」

「いや、なんでもないよ」



きょとんとしているエリーゼに対し、ミラは再び、彼女の頭を撫でた。


別に証というものにこだわるつもりなど、さらさらなかったりするのだが、
繋がりというものに、何故か興味をもって。




「………」




街へ着くまで、ミラはずっと何かを考えていた。
そしてその後、街中へと消えていった。

そうして日も暮れて、ジュードはなかなか戻ってこないミラを心配して、街中を探していた。

ふと目に、長い金髪の髪が目に入る。
なんともわかりやすい。

(どこにいても、見つける自信はあるけど)


ジュードは見慣れた姿を見つけた後、そんなことを思うと、彼女の元へと走り出した。



「ミラ!」

「ジュード」

「もう、なかなか戻ってこないから、心配して……」

「いや、すまない、ちょっとな」



ミラはキョロキョロと辺りを見渡した。



「何か探してるの?」

「ふむ、なんだろう」

「?」

「以前、私は君に、ペンダントを渡しただろう。あれは私なりの、君への信頼のつもりで渡したんだ。だが、エリーゼが君からブウサギのキーホルダーを貰ったと聞いて……、そういえば…」

「君は僕から何も貰ってない、って?」

「不本意だが、何故かそう感じてしまってな」




なるほど、そのように捉えられていたのかと、ジュードは思った。



「ミラにはまだ、あげられない」

「どういうことだ?」




ジュードの言葉の意味を理解できずに、ミラは首を傾げた。



「そうだね、僕はミラから、こんな大事なものを渡してくれたのに。僕はまだ、君に渡したいと思っているものを渡せないんだ」



ジュードは若干照れくさそうに、そう言った。
その言葉の意味を、ミラはまだ理解できなかった。






prev|next

back

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -