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 計算されたカコフォニー








自信満々な裏には、桁外れの努力。

育て方次第で、幼い頃に人生を生きていく為の自分が形成されることは、こういう風になってしまった自分だからこそ、わかることであった。


朝、目覚めれば、時々、気分は重く、憂鬱な気持ちになることも、少なくはない。

寝起きではっきりとしない思考は、彼の気持ちを、更にネガティブへと連れていく。


リーゼ・マクシアに渡り着いてから、二十年余りの月日が流れても、対応しきれない、自分の体。精神状態。



「……だりいな」



朝は弱い方ではなかった。起きようと思えば、すぐに起きることはできた。
だが、今日もまた自分は、愛想笑いをするのかと、考えるだけでやり切れない。



「まーた、仏頂面してるね」



ひょっこりと、少女が、アルヴィンへ向けて、顔を出す。
毎度の如く、いきなりの訪問だ。それにもアルヴィンは慣れた。



「仕方ないだろ、朝は弱いって、おたくならわかってるだろ」



気分が乗らない時も、そう嘘をついて、自分の事をごまかした。
レイアは、それに納得してくれているんだとばかり思い込んでいた。

しかし、それは、彼の勘違いでもあり。





「最初は、朝は強いとか、言ってたのにね」

「あれ、そうだったっけ?」




知ってるよ。ごまかしたって、無駄なんだから。
彼は確かに、自分より長い時間を生きている。
経験したことも、自分とはまったく違う。

年上の人間は、少しでも大人ぶろうとする。

それがレイアは気に入らない。

だからつい、本能的に、レイアはアルヴィンの鼻を摘んでしまった。



「痛っ」

「もうみんな起きてるんだから、アルヴィン君も、早く下に降りてきてよね」





レイアは俯いたまま、風のように去って行ってしまった。
レイアの香りが、アルヴィンの周りを包む。いつまでも、消えることなく。
声のトーンから伺える、彼女の状態。怒っているのは一目瞭然だ。
アルヴィンは鼻を擦りながら思った。








「幼いのは、俺の方か」







彼女の逞しさに、アルヴィンは密かに憧れていた。

摘まれた鼻の痛みがなくなったら、下に降りよう。
アルヴィンはそれまで、ベッドの中へと潜り込んだ。








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タイトル・涙星マーメイドライオン



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