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 幸福進化論






レイアのお腹には、アルヴィンとの間に授かった命が宿っていた。
喜ばしいことに、それは二人目の子供だった。

一人目を授かった時、彼は相当嬉しかったらしい。




「できちゃった。」




お腹を抑え、レイアが満面の笑顔でそう言い、アルヴィンにVサインをした。
彼は拍子抜けしていて、しばらくぼんやりとしていた。

後々、よく考えて、ようやく真実に辿り着けたのか、アルヴィンはレイアを抱きしめて。



「ありがとな」



よかった、喜んでくれたとほっとして、レイアは胸を撫で下ろす。

その初めての子供も無事に産まれた。
レイアによく似た男の子。

最近ハイハイを覚えたのか、ありとあらゆる所を歩き回り、目を離さないようにするのが精一杯だ。

二人目を妊娠しているレイアは、臨月が近いということもあり、体は重く、軽やかに動く事はできなかった。





「レイア」



立とうとしていたレイアの両肩を抱いては、彼はレイアを椅子に座らせた。



「おたくは無理すんな。あいつは、俺が見てるから」

「ホント?大丈夫?結構強力だと思うよ?」

「俺とおたくの息子だろ、強力なのはわかってるつもりだぜ」



そうして彼は、レイアの頬に、また唇に自らの唇を落とした。
不意打ちだ。数えきれないくらい、彼とはキスを交わしたのだが、照れは未だに残ったままだ。

その時に見せる彼の顔がまた、レイアの心を奪う。




「ずるいよ」




こんなに宝物みたいに大事にしてくれる。
妊娠しているからとか、そういう理由だけではなく、彼と付き合いはじめてから、ずっとずっとそうだった。

傍にいると幸せだ。
そう言ったら、上手くごまかされてしまったけれど、陰で喜んでいたっていうことを、レイアは知っていた。





「さて、どこ行きやがった、あのクソガキ」



アルヴィンは念入りになり、逃亡している息子を探す。
小さいから、どんなところにでもいける。
なんて厄介なんだろう。

子供は嫌いだった。
どう接していいのかわからない。

いざ自分に子供ができた時は、自分にちゃんと父親を努めることができるのかどうか、本気で不安になったりもした。



「以外になんとかなるって。気にしないで気楽にいこうよ。わたしもいるし」



彼女が相手で、よかった。
不安だらけであった彼の心は、いつもレイアが解してくれた。
甘えていることは承知の上であるが、レイアも子供も、何があっても大丈夫なように、自分はしっかりしなくてはならないと思った。


愛している。
世界一、愛しているんだ。



「あーう、あー」

「あ、お前……、自分から出てくるなんて、いい子じゃねえか」


捜していた息子が、自ら現れ、犬のようにアルヴィンの足にすりすりして、ズボンをぎゅっと掴む。


「だぁ」

「お前といい、レイアといい、俺を翻弄させるのが得意らしいな」




息子を軽々と抱き上げては、きゃっきゃと笑っているのを見つめる。

レイアが、笑うとアルヴィンにそっくりだよって言っていたっけ。


(俺、こんな顔して笑ってんのか)



それがなんだか、くすぐったさを感じさせた。

息子を連れて、レイアの元へ戻る。レイアの顔を見て、息子がレイアの所に行きたそうにしていたから、彼女に息子を托す。




「よく捕まえられたね」

「向こうから出てきた。俺に似てお利口な奴」

「違うよ、わたしに似たの!」



こういうやりとりをしているだけでも、充分すぎるくらいに幸せである。

アルヴィンはレイアのお腹を摩りながら、またひとつ、彼女にキスをした。



「愛してるよ」


「久々に聞いたかも……」


「あとはこいつが産まれたら、また、言うつもりだ」


「そっか。なら、また聞けるんだね」


「こういう台詞は、たまに言うからいいもんだろ」




本当は常にそう思っているよ。子供も、何よりレイアを誰よりも愛している。

世界一幸せにしてやるんだ。










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