ジュード×ミラ | ナノ


それ以上は今は言わないで






「私に、用があったんじゃないのか?」


自分を訪れてきていたジュードが引き返したことを知り、ミラは追いかけて。
やっと姿を見つけて、ミラはジュードを呼び止めた。
そんなミラを見て、ジュードはにこっと笑う。


「追い掛けて来てくれるとは思わなかった。いいの?仕事は」

「大丈夫だ。四大に頼んできたからな」



いつになく真っ直ぐな琥珀の瞳。いつもとは何かが違う。
一体彼に、何があったというのだ。
いつもと違う彼の雰囲気に、ミラは困惑する。
言葉が何も頭に浮かんでこない。ジュードが何か用事があるのはわかっているというのに。

「そっか。じゃあ…ちょうどいい感じだね。少し付き合ってもらうよ、ミラ」


ちょうど都合のいいことに、今は二人きりだった。
ジュードがしたことはミラを抱きしめるということだった。
彼女の長い蜜色の髪を触れながら。
彼の用事とは、自分のことを抱きしめることだったのだろうか。
そうなんだとしたら、なんて可愛い事をする奴なんだと、からかいたくなってしまうではないか。


「いつも思ってた。綺麗だよね。その髪」

「君も、な」


そうしてミラもジュードの黒髪を撫でた。
今まで、人間という概念での、「男の人」の髪に触れたことはない。
すごくサラサラで、何故だろうか、そうする度に胸から何かがこみ上げてくる。


「ミラ?」


言葉では言えないことが、たくさんある。
ミラには言う事が出来なかった。こういった人間的な感情のものは。
彼女はどちらかで言えば、態度で示す事が多かった。

そのタイプのミラはジュードの肩に手を回し、更に密着し始めた。


「ミラ……どうし……」


ジュードは一瞬、キャパオーバーになりそうになるものの、理性を呼び戻し、問い掛けた。


「なんでもない」


この気持ちはなんだろうか。ジュードといつまでも、こうしていたいと思う、この気持ちは。これが欲求というものか。

それならば、この欲求は瞬時に満たされるものではあるが、永久に満たされるものではないと思った。だからまた、ジュードとこうしたいと思う気持ちはまた、自分の中に生まれてもおかしくはない。

(なあ、ジュード。君は?)


ジュードが自分と同じ気持ちを味わってくれているのなら、いいなとミラはどこかで思っていた。



「始めてだ、こんなこと」

「こうしていたいって?」

「ああ、本当、何故だろう」

「僕はあんまりその問いには答えたくないかも」


どういうことだ。ミラは首を傾げる。


「何故だ?」

「怖いからさ」

「今ここまで近くにいるというのにか?」

「僕の勘違いだったら、怖いから」


ジュードはよく、ミラを混乱させる言葉を使っていた。
何が勘違いだというのだろうか。ミラにはわからない。ジュードは何を思っているのだろうか。

しかも、ジュード。君だから尚更だ。


「よくはわからないが、まあまあは……納得したぞ」

そんなことを言いつつも、ミラは理解などはしていなかった。

「そっか。じゃあ……もっと抱きしめてもいい?」

ミラの髪に口づけながら、ジュードはミラに手をのばした。
ミラが返答する前に、もう、ジュードの腕は彼女に絡み付く。


「どうしよう」

「ジュード?」

「僕は今すごく、ミラにいじわるなことをしているね」


ジュードの息がミラの首筋にかかる。 とくんとくんと伝わる互いの鼓動。
それは、抱きしめあっているから、感じられるものである。


(私は人間が好きだが、この好きとはまた違うものだ)


「そうか、私はジュードに、ひどいことをされているのか、ふふふ」

「何笑ってるの?」

「なんでもない。気にするな」



思いは無限に広がる。
君が思ってる以上に広く。
これから先も、君と一緒にいたい。

その思いだけに嘘はなかった。










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