君がくれた優しさ
ミラがいなきゃ、ミラがいないと、本当に駄目なのだと思った。
人間じゃなくて、マクスウェルで、
自分のやるべきことを、決して諦めなくて、曲げなくて、
そして、たまたま出会ったジュードを、彼女は『必要』としてくれた。
彼女の傍にいると、ジュードはとても幸せだった。
だけど、ジュードは知っている。
ジュードがミラに恋い焦がれていても、
ひとつ、大きな思い違いをしていることを。
「ミラ、お願いがあるんだけど」
「どうしたんだ、ジュード」
このような願いを、すること自体が間違っているのかもしれない。
けれど、彼女が傍にいなくなったらという恐怖が、ジュード自身を襲っていた。
ミラが傍にいなければ、ジュードは自分自身が成り立たないということに、気づき始めていた。
わかってる、わかってるよと自問自答を繰り返しつつも、それはまだ、わかっているつもりでいるだけで、本当はまだわかってはいない。
それでも体は、ミラを求めている。だから口が勝手に動いて止まらなかった。
「あのさ……抱きしめても、いいかな?」
ジュードがいきなりこんなことを言い出しても、ミラは動じない。
自分の欲求を素直に伝えてくるジュードにミラが感じたのは、何かがあったんだということであった。
抱きしめるということ、それはすなわち、肌の触れ合い、誰かの温もりを感じたいということ。そうかとミラはジュードを見て、口元を緩ませた。
「ふむ。ジュード、お前は今、淋しいと思っていると……そういうことか?」
「え、ううん、そうじゃなくて…………ううん、そうなのかも」
「なんだ、変な奴だな、いいぞ。それでジュードが落ち着くのであれば、そうするといい」
ミラはベッドへ腰掛けて、ジュードが来るのを待った。
自分がこうすることも、彼女はどういう風に思っているんだろう?
それでもジュードはもう、無駄な思考を全部投げ捨てて、ミラをぎゅっと力強く抱きしめた。
ミラはジュードの背中に手を回して、ジュードの抱擁に応えた。
これで淋しさを埋める事ができるだろうか。少しでも彼の役に立てるのであれば、ミラは嬉しかった。
「大丈夫か?ジュード」
「う、うん………ありがとう」
温かい。彼女と体を重ね合って、自分はここに生きているんだと彼は実感した。
ずっとこうしていたかった。
だがもうこれで、わかった気では済まなくなった。
ジュードはもう、わかってしまった。
もう、きてはいけない所まできてしまっているということを。
(君がいないと、僕は――――生きていけない)
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